新堂冬樹著・徳間文庫
文庫上下巻で1300ページ以上あり、あらすじを読んだだけで疲れる作品であることは明白、元気な時でないと読めなさそうだったので、かなり前に買ってましたが"積読"状態でした(^_^;)。
新興宗教にどっぷりつかった母親が、学校行事として節分の豆まきをさせる教室に乗り込み、狂ったように少年を連れ去る場面からこの物語は始まる。それまで優しく美しかった母親が新興宗教にのめり込み、家庭が崩壊する。挙句の果てに、父親を殺し母親自らも少年の目の前で自殺をする。衝撃的な幕開け。
少年は大人になり信仰宗教の教祖の納まっている。自らを"メシア"と呼ばせ、信徒たちからのお布施で贅沢三昧の生活を送っている。でも信徒の前では解脱した聖人君子として法を説く。だまされる信徒たち。洗脳の手法をとり組織をどんどん拡大し、信徒の女性にも手を付けるとんでもない人物になっている。
フィクションではありますが、そこかしこにオウム真理教を彷彿とさせる場面が出てきて吐き気を催す。上巻では、母を失った少年が新興宗教の教祖となり、人間の醜い欲望を次々と実現していくが、その求めるものは亡き母の姿で、母と見まごう新たな女性(城山麗子)の出現まで。
新堂冬樹には、目を背けたくなるほどのノワール物の"黒新堂"とそんな要素のかけらもない純愛物の"白新堂"があります。この作品は、"黒新堂"ではあるけど、根底に流れるのは幼い頃に母を奪われた少年の哀しみ。だからといって次々と周りの人間を自らの欲望の為に洗脳、排除していくことは許されることではありません。
下巻では少年(教祖)の破滅が描かれるか。目が離せないまま下巻突入です。
- 作者: 新堂冬樹
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2004/03
- メディア: 文庫
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