式貴士のアンソロジー。これと 抒情小説コレクション として「窓鴉」の2冊が出ています。1991年に急逝してはや23年。式貴士として作品を発表していたのは、85年までらしいので、来年30年になる。角川文庫で作品が出ていたのも85年の「ヘッドワイフ」が最後だから、私くらいのSFファンでないと、もう忘れられた作家さんかもしれない。
この作品集は、2008年、久しぶりに編まれた文庫。表題作「カンタン刑」と、これまで単行本未収録の2編を含み、「怪奇小説コレクション」としてグロテスクシチュエーションの短編を集めたもの。「カンタン刑」は、式貴士の第1作品集のタイトルにもなった作品で式作品として良くも悪くも最も有名な作品。
私もこのblogで何度か「カンタン刑」なる単語を使ってます。凶悪な殺人犯に与えられる死刑よりも恐ろしい刑「カンタン刑」。カンタン刑について詳しくは書きませんので是非読んで欲しいです。体調の悪い時に読むと吐き気を催すこと請け合い。あとゴキブリ嫌いには絶対お勧めしません。
収録作は以下の通り
「カンタン刑」…23歳の連続殺人犯草田八朗に下されたのは世にも恐ろしい「カンタン刑」だった。
「首吊り三味線」…首吊りの大家にお話を聞きに行く話。
「涸いた子宮」…ある日突然やってきた美しい女性と一緒に住むと…
「ヘッド・ワイフ」…事故で最愛の妻の脊髄損傷し、旦那は最先端医療を試すことに。。
「おれの人形」…触ったものを石にする能力を持った男の話。
「マイ・アドニス」…美大に通う女性が家庭教師をしている少年をモデルに彫像をつくりその美しい作品に蔦を絡ませるとモデルの少年の体調が…。
「血の海」…白血病で余命いくばくもない愛する妻。新鮮な血を毎日飲んだら健康になるのに血の雨でも降らないかしら…といった冗談の世界が翌日本当になってしまい…。
「アイス・ベイビー」…中絶した胎児を冷凍し愛玩動物として育てる世界
「メニエール蝉」…耳鳴りがする話
「塵もつもれば」…正確に死期が分かる占いソフトが出て、自分と妻の死期が分かったら…。
「鉄輪の舞」…妻が重荷になった男は、妻と別れる決心をし、新しい女性と付き合うと…、。
「東城線見聞録」…パラレルワールドの東武東上線各駅に住む珍妙な住民の話。
「仕置猫」…上村一夫画 父親っ子の優秀な息子が母親の浮気現場を見てしまい、生まれた妹を殺してしまうが…。
再刊はされていないようで、amazonでは品切になってましたので店頭在庫のみだと思います。BOOKOFFにはたまにあります。
私的にはもうひとつのアンソロジー「窓鴉」の方が好きです。
式作品に触れたことのない人、この作品集に限らず式貴士の名前を古本屋さんで見つけたら是非読んでみてください。ホント、お勧めです。
- 作者: 式貴士
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2008/02/07
- メディア: 文庫
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