著者の金原さんは元街金。そこでの経験をセミノンフィクションで描いた作品。
「ナニワ金融道」「闇金ウシジマくん」など、闇金、街金を扱った作品は結構ある。それだけ、”身近にあって興味はあるけどなんだか怖い”ものなんでしょう。確かに闇金を利用するようになったら、まぁ人生おしまいに違いありません。ただこれだけ締め付けが厳しくなっても闇金はなくならない。それが著者のいうところの必要悪ということでしょうが、犯罪、もしくは犯罪スレスレのことをやっていながら、こういう開き直りはいかがなものか。更にいえばそれを面白おかしくこういう本にしてしまうのも、正直あまりいい気はしない。とはいえ、それを面白半分で読んでしまっている自分も下衆の仲間であることは間違いなんだけど。
昔はトイチ(10日で1割)なんていわれていた闇金も、今じゃトサン(10日で3割)とかトゴ(同5割)なんてのが当たり前らしい。しかも闇金を利用する人なんて、元金まで含めて用意をする事はできない。毎回ジャンプと言って利息だけ払うことに。
例えば、2万円借りたとする。10日で5割だから、10日後の利息は1万。だから、まず2万の借用書にサインをもらい、相手に1万を渡す。残りの1万は利息の先払い。こうやって、10日後に利息が発生する。この繰り返し。しかも利息を払わないと利息分が元金に繰り込まれる。あっという間に借金が膨れ上がるという構図。
取り立てといっても、著者のいた街金は暴力までは使わない。それでも夜討ち朝駆け位はする。ラスト近くのお話で、取り立てに行った家に、債権者の父親はいなくて、5歳と3歳の子供だけ。数日後再度取り立てに行っても両親の姿はない。子供を置き去りにして逃げたらしい。残された子供といっても5歳では料理なんかできず、台所を見ると、なまのままかじられた野菜やインスタントラーメン。野菜もさすがに玉ねぎは食べられなかったらしく歯型だけ付いていた。そしてテーブルの上には綺麗な何かが載っている。良く見ると熱帯魚の尾びれ。食べる物がなくて買っていた熱帯魚を食べたらしい…。さすがにいたたまれなくなり、保護施設にTEL、その間に食べ物と切るものを買ってきて上げて、無事施設に引き取られていったそう。
ここまで来ると、借りた奴が悪いのか、貸した方が悪いのか良くわからなくなってくる。確かに暴利で貸すのは悪い。しかし人間として捨ててはいけないものまで捨ててしまうのはどうなんだろう。その原因を作ったのは、その本人か闇金か…。
生きているといろんな事がある。自分の経験している世界なんてそのほんの一部でしかなく、そういう自分の知らない世界を知る事ができるノンフィクションはやっぱりジャンルとして面白いと思うのです。
- 作者: 金原猛
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/04/09
- メディア: 文庫
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