日々雑感っ(気概だけ…)on Hatena Blog

思ったこと、思っていること。読んだ本、観た映画、TV。聴いた音楽…。会社でのこと、家族のこと、自分のこと。日々のうつろいを定着させています。はてなダイアリー開始は2003年、2006年4月から毎日更新継続中。2017年6月8日「はてなblog」アカウント取得、2019年1月「はてなダイアリー」から正式移行しました。アクセスカウンター2019年01月26日まではpv(2310365)です。

「狐罠」

狐罠 (講談社文庫) [ 北森鴻 ]
北森鴻著・講談社文庫

 店舗を持たない骨董商を旗師と言います。その旗師・冬狐堂を名乗る宇佐美陶子の物語第1作。
 奈良県N塚古墳から出土されたというふれこみの「唐様切子紺碧椀」を同業者の橘薫堂から仕入れたが、それは巧妙に作られた贋作だった。目利きでなければ務まらない旗師・陶子が仕掛けられた”目利き殺し”。陶子はプライドをかけて、橘薫堂に”目利き殺し”返しを仕掛ける。
 そんな中、橘薫堂のスタッフの女性が何者かに殺される。陶子にも疑惑の目が掛けられるも、目利き殺しの為の贋作作りを進めていく。この殺人と陶子が買った贋作、橘薫堂の正体、様々な思惑が絡んで物語は佳境に。


 骨董の世界は全くの門外漢だけど、すごく面白く読めます。主人公の宇佐美陶子が自分の理想の女性とぴったり。頭がよくて度胸があってそれでも女性らしさを失わない。別シリーズの蓮杖那智だと造形は似ているけどちょっと怖い感じ。ちょっと違うかもしれないけど、松本零士のキャラクターでいえば、メーテルとエメラルダスのような。陶子と那智はそれぞれが主人公の物語にお互い客演しているというのも似ています。


 ミステリー、特に殺人事件が絡む小説は、あまり好きではありませんが、北森作品は殺人事件とその謎解きが物語の中心ではなく、あくまでもその周辺の物語がメイン。


 残念ながら北森鴻は2010年48歳の若さで早逝されており、新しい物語はもう読むことができません。冬狐堂シリーズは以下の4作

・狐罠(1997年5月 講談社 / 2000年5月 講談社文庫)
・狐闇(2002年5月 講談社 / 2005年5月 講談社文庫)
・緋友禅(2003年1月 文藝春秋 / 2006年1月 文春文庫)
・瑠璃の契り(2005年1月 文藝春秋 / 2008年1月 文春文庫)

その他の作品でも陶子がちらりと出て来たりしますが、読んだのは今回の「狐罠」と「緋友禅」だけなので、残りあと2作。
もうちょっと楽しめそうですが、早逝が悔やまれます。
お勧め!