日々雑感っ(気概だけ…)on Hatena Blog

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「元祖大四畳半大物語」


 松本零士著。
 少年マガジンに掲載され第三回講談社出版文化賞児童まんが部門受賞を受賞した「男おいどん」のアダルト版といえばよいのか。掲載誌青年漫画雑誌だったこともあり、毎回エロシーンがある。
 主人公足立太(あだちふとし)は、九州出身のトイレ風呂共同四畳半一間、第三下宿荘の住人。向かいの部屋にはやくざ者のジュリーと美しいジュンさんの二人暮らし。二人とも夜のお仕事なので昼夜逆転した生活の為、昼間はずっと部屋にこもってエッチしている。太の部屋のとなりはオカマのまさみちゃんと現場監督の底力夫婦がこれまた毎日のようにエッチしている。一階には下宿のおじさんとおばさん。その他の部屋には人が入っては出ていく。

 「男おいどん」と基本的な構成は一緒で、一話完結。毎回のようにジュンとジュリーの部屋にノックもせず声を掛け、ジュリーに殴られる。毎回太のメガネは割れるけどすぐに元通りになっていたり。布団もない太に優しくしてくれるジュンさんは、太の初めての人になって以来、事あるごとにエッチをしてくれる女神のような人。
 「男おいどん」は少年誌の為、エッチなシーンは出てきませんが、「元祖―」は、エロ話が多い。
 ジュンさんは、高校生の頃にやくざの事務所で襲われたところをジュリーに助けられて以来、一緒に住むようになる。お互いに大切に思っており、ジュリーの不始末を身体で返す事もたびたび、エロ写真を撮って販売することも黙認している。

 全77話のお話しですが、”いずれ大物になる”と言われている太は一向に大物になる気配はなく、ジュリーもずっとジュンさんのヒモのまま。いつまでたっても学園祭の前日を繰り返す「うる星やつらビューティフルドリーマー」のように、繰り返される日常は、もしかしたら、理想の日々なのかも。

 成長をすることがすべてではなく、楽しい日々が永遠に続くというのは、成長物語の対極にある。ビンボーで、布団もなく明日の食い物にも事欠く生活にもかかわらず、嫌な感じが全然しない。「男おいどん」の最終回は大山昇太が意気揚々とアパートを出て行って戻ってこないという物寂しい終わりに対して、「元祖ー」の方は、いつもと同じドタバタが終わって、いつものように終わっている。
 「男おいどん」と同じような舞台なのですが、周りにエロのある方がやっぱり自然。どちらかというと底辺の物語だけど、金さえあれば幸せっていうのとは違う、この歳で読み返すと、本当の幸せとは何かを考えさせられます。
 既にサンコミックス朝日ソノラマ漫画文庫全6巻は絶版で文庫版のベストセレクションがあるのみ。旧版の復刊を望みます。