豊田有恒著・勉誠出版
今やSFと意識しなくてもSF的要素の入った物語が巷に溢れています。しかし私が小学生の頃45年くらい前は、”SFを読む”という明確な意思がなければ読まなかったし、「SF」とカテゴライズされた小説は読まない人も多かった。それだけSFは特殊なジャンルでした。
もっとも私くらいの年齢では、既に鉄腕アトムをはじめとするSF漫画、アニメがあって、小説のジャンルとしてのSFに何の違和感もなかったし、逆に本を読み始めた頃はSFばかりを手に取って読んでいました。
私が小説を読み始めた頃の日本SFを生み出していた人々は、日本アニメ黎明期に制作者として原作やシナリオや構成、考証をしていた人たちでした。
この本の著者である豊田有恒もそのうちのひとり。『エイトマン』『鉄腕アトム』『スーパージェッター』『宇宙少年ソラン』「宇宙戦艦ヤマトシリーズ」の原案、設定などなど、豊田有恒と知らずに最初に触れたのはこれらの当時”テレビまんが”と言われた作品でした。
SFマガジンが創刊されて、次々と第1世代の日本SF作家がデビューしてきます。星新一、小松左京、筒井康隆、半村良、矢野徹、眉村卓、平井和正…。私が一番SF小説を読んでいた時期、彼らの作品は、角川文庫(星新一は新潮文庫が充実していた)で次々と旧作と合わせて新作が出ていました。ほとんど読みましたね。
その後もしばらくは好んでSF小説を読んでいましたが、恐らく篠田節子の「絹の変容」を読んだくらいから、どうやら70年代に筒井康隆が唱えた「SFの浸透と拡散」がTV、映画、漫画だけでなく、小説の他ジャンルを領域まで犯し始めたのを感じました。今やSFと銘打っていなくてもSF的なセンスオブワンダーを持った作家の方が多いくらいになり、誰も身構えてSFを読まなくても、自然とSF(的)小説を読むくらい一般的になりました。
東野圭吾とかもSF的シチュエーション多いよなぁ。
SFは決して特異なジャンルではない事が時代の流れからもわかります。宇宙船が出てくる、タイムマシンが出てくるのがSFだと思っている人ももういません。でもそういう風にあらゆる可能性をSF小説として形作ったのが、彼ら日本SF第1世代のメンバーです。
第1世代の日本SF作家のほとんどは鬼籍に入ってしまいました。旧作は書店には並べられておらず最近はkindleで結構読めるようになっています。今でも十分面白い作品ばかりなので、是非読んでほしいなぁ思います。
- 作者: 豊田有恒
- 出版社/メーカー: 勉誠出版
- 発売日: 2019/07/31
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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