長江俊和著・新潮文庫
10年以上前、深夜つけっぱなしにしていたTVでドキュメンタリーがやっていた。タイトルは「放送禁止 しじんの村」。
自殺志願者を思いとどまらせるための施設「しじんの村」についての取材。自らの教師時代に教え子が自殺したことがきっかけで「しじんの村」を設立した、村長の「しじん」。バーベキューや農業・酪農体験を自殺志願者とともに行い、心のケアをしていくがそれでも自殺者は発生するという。そんな中、「ハニコ」と呼ばれる女性が自殺未遂を起こす。
最初に思ったのは「なんだこれ?」
夜中の2時過ぎに人知れずやってたこの番組は結構衝撃でした。もっとも、これがフェイクドキュメンタリーで、このドキュメンタリー映像の中に表面的な主張の裏に隠された真実が散りばめられていると知った時の2重の驚き。
しじんの村は5作目である事、基本は深夜不定期に深夜に放送され全部で6作品、映画でも3作品作られています。
(youtubeに全編ありました)
放送禁止5 「しじんの村」 (2006年)
「出版禁止」は、「放送禁止」の企画・脚本・監督をされた長江俊和さんが、本で「放送禁止」をやるというコンセプトで作られた本。
「放送禁止」は有名人ではない人の(フェイク)ドキュメンタリーなので、見ていて面白かったのですが、この本の本編「カミュの刺客」は有名映像作家の心中事件を追うもの。その映像作家の妻はこれまた有名女優ということで、そんな事件が現実にないのを知っている読者としては、このルポそのものがフィクションという事。それではどんなに仕掛けを施そうとも怖さが半減以下。全く知らない事件を本題に持ってきたらもっと怖かったのに残念です。もっとやり方あったと思うんですけど、これではただのホラー。
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- 作者:長江 俊和
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2017/03/01
- メディア: 文庫