1985年だから、今年丁度四半世紀を数える。乗り合わせたのは、スタッフを含め524名。生存者はたったの4名。一瞬にして、520名がなくなった史上最大の航空機事故。
この本は、この日航ジャンボ墜落事故の遺体の身元確認班長を命ぜられた当時警察官だった著者が、事故のあった8月12日から4ヶ月にわたり身元確認作業を行った記録です。
続々と体育館に搬入される遺体。いや、最初は完全遺体だったが、数日を経て部分遺体ばかりになる。それらをすべて丁重に扱い、小さな特徴も見逃さないよう、細心の注意を払いながら人物を特定していく。
この、気の遠くなる作業に、日赤の看護婦(最近は看護師って言うけど当事表記のまま)、医師、歯科医師そして警察官が総出で不眠不休の作業を行う。体に染み付いた死臭は簡単には落ちず、夏真っ盛りの体育館、気温は40度を越す。遺体には蛆が沸き、食事ものどを通らない。過酷と一言で片付けることのできない地獄がそこにあった…。
「沈まぬ太陽」(山崎豊子)・「クライマーズハイ」(横山秀夫)とこの事件周辺を描いた創作物も読みましたが、当事者のノンフィクションにはかないません。
いつもの如く、通勤電車の往復車中で読んでいましたが、何度も落涙しそうになり、天井を見上げました。
真剣に遺族のことを想い、無念のうちになくなった犠牲者を想い、全身全霊を仕事に傾け検屍に当たった人たちの一挙手一投足が心を打ちます。
仕事って地位や名誉やお金の為にするんじゃないんだよね。自分のすべてを相手の為に役立てる為に、能力があろうとなかろうと進んで泥水に手を突っ込む位の気構えがなければいけないと教えられました。
目を瞑るのは、誰にでもできます。
真実に目を向ける勇気を!
お勧めです。
- 作者: 飯塚訓
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/04/19
- メディア: 文庫
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