新堂冬樹には、ノワール物の"黒新堂"と純愛物の"白新堂"がある。昔は明確にこの区分ができたのですが、最近はそのどちらにも属さないような作品を書かれている。
この作品も犯罪を題材としたものなので、どちらかといえば"黒―"に属するものですが、実際に起きた事件をもとに小説化しているシリーズらしい。
桂木涼子。容姿端麗、都内の進学校で成績は常にトップクラス、まさに才色兼備の女の子。虫を愛でるというところが普通の女の子と異なるところだけど、それ以外はごく普通の。しかしこの少女が、実母に猛毒のタリウムを使って殺そうとする。しかも一気に致死量を与えるのではなく、ばれないように少しずつ。。
でも彼女は、母親が嫌いなわけじゃない。キャリアウーマンで、ぐうたらな父親の代わりに家計を支える立派な母として尊敬もしている。あまりにも仕事が忙しい母を"楽に"させる為に死を与えようとする優しい娘。しかもそれを仮名blogで日記を公開しながら。なぜ彼女はそんなことをするのか。そしてお母さんは?
とても哀しい小説でした。心に傷を与えると人はここまで残酷になれる。当人は残酷だなんて思っていないけど。何が正しくて何が間違いか一瞬分からなくなってしまう。。
現世は地獄。楽になるためにはこの世界から脱出する事、というのは共感。でも私の場合、自死は負けだと思うし、どんなに愛する人でもこの世から旅立たせる(殺す)なんて究極に優しいことはしてあげません。
人は人の間でしか磨けない。魂を磨く為に現世にいるのだから、どんなに辛かろうともそこで踏ん張ることが大切。「神様は耐えられない試練を与えることはない」とも言います。自分の人生を投げてはいけないし、他人の試練の機会を奪ってはいけない。そう思います。

- 作者: 新堂冬樹
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2009/10/01
- メディア: 文庫
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