やくざ映画の名作「仁義なき戦い」の脚本家笠原和夫さんの本。昔は、映画って2本立て、3本立てで、1本興行は年に数本、映画会社のスタアが一堂に会した大作位でした。もっとも、私はそんな時代が終わってからの映画ファン。映画会社の専属俳優、専属監督、制作配給システムが完全に崩壊、角川映画が出始め、1本興行が当たり前の時代になっていました。
笠原さんは、東映の社員として脚本を書いていた。時はヤクザ映画真っ盛り。東映と言えばそのトップランナーとして、たくさんのヤクザ映画を作っていました。
社員ライターなわけですから、会社から言われた作品を書かねばなりません。本来自分の書きたかったのは、抒情的な作品だそうですが、会社は当たる映画、当時でいえば、任侠ものやくざものを書かねばならなかった。でもプロとして、一切手を抜くことなく、しっかりと調べ、先輩の作法を学ぶことで一流の脚本家になります。
後年、あまりにも脚本軽視の作品(「あの夏、一番静かな海」北野武監督)を観て衝動的に書かれたのが、後半にある「秘伝シナリオ骨法十箇条」。これまでの脚本家人生で、先輩諸氏から言われたシナリオを書く為の10の基本をまとめていて、大変興味深い。
巻末にあるのは、返還直前の沖縄を舞台にしたやくざものの未映画化シナリオ「沖縄進撃作戦」。
引退後は、一切映画を見なかったという。仕事としての映画への関わり。食べる為に書くことに徹しながら、それでもなお、プロとして全力で映画製作にかかわった気迫が伝わる本でした。
- 作者: 笠原和夫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/06/01
- メディア: 単行本
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