1971年藤田敏八監督。旧体制での日活(株)で作られた最後の作品。配給は大映と共同出資して作られたダイニチ映配。
日活はこの作品の後、「にっかつロマンポルノ」を作り始めるわけですが、その徹尾の作品として退廃的なこの作品が作られたことが興味深く見る事が出来ました。
1971年当時まだ6歳。当然リアルで観ている訳はなく、大昔名画座か、ビデオかで観てはいるんですけど、あまりに詰まらなくて大筋すら覚えていませんでした。で、TSUTAYAレンタルで改めて観る。
朝、男性5人組に襲われた女性・早苗(テレサ野田)が、茅ヶ崎の海辺に車から投げ捨てられる。女は全裸になって海で身体を清める。それを偶然見た清は、一目惚れしてしまう。清の友達の野上(村野武範)は、高校を退学したが、友達の清とつるんでいる無軌道な男。野上の家はスナックを経営しており、母親はいけすかない男亀井(渡辺文雄)と再婚している。ここら辺が野上の屈折の原因というのは、今見ると可愛くもある。
色々あって、最後、亀井の持つヨットを奪い、野上と清、それと早苗とその姉の4人で湘南の海に出る。ヨットを俯瞰し、エンディング石川セリの「八月の濡れた砂」が流れる。
8月、湘南、若者と揃えて、ここまで暗い作品になるってのはある意味すごい。テレサ野田のエキゾチックな顔立ちがぞくりと男心をそそります。野上の同級生の秀才に剛たつひと(達人)が出ていて、翌年、TVドラマ「飛び出せ!青春」で、村野が、教師役、剛が不良少年役と全く逆の設定で出ている事を知っているとちょっと面白く観れます。
70年安保の挫折で若者は立ち直れない程の無力感、挫折感を味わった。その後に育った私たちは、もう若者としての一体感を生むムーブメントは起きようがなかった。おたくの時代の始まりは、ここから始まっているのです。
そういう意味では、オタク前史のさらに前の挫折を知る為の映画といってもいいかもしれません(いいすぎかな)。
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