村川-松田コンビで作られた遊戯三部作(「最も危険な遊戯」「殺人遊戯」「処刑遊戯」)や前年同じ角川で制作された「蘇える金狼」のイメージで企画された作品で、観客もそのつもりで観ると完全に肩透かしにあう。松田優作のアクション封印の最初の作品でしょう。「蘇える金狼」でも、その片鱗はみえていましたが。「野獣死すべし」に至っては、主人公伊達邦彦の造形は完全に原作から離れて、完全にあっちの世界に両足突っ込んだ危ない人になっていて、逆にお近づきになりたくない。
そんなお近づきになりたくない人に、当時日本一美人の誉れ高い小林麻美がたった1回コンサート会場で隣りに座っただけで惚れてしまう。しかも、強盗に入った銀行に偶然居合わせた麻美嬢を躊躇なく殺してしまうんだから、正直この時の松田優作は憎らしかった。小林麻美をヒロインに指名したのは松田優作だそう。まーね、あの頃大人気の超美人と競演したいと思う男心は分からなくはない。
それにしても、スカッとしない映画です。いつもの角川商法で、公開時にたくさんのCMをやっていて映画としてはヒットし、いまだに信奉者の多い映画でもあります。特に後半の夜汽車での「リップ・ヴァン・ウィンクルの話」のシーンは、なかなか怖いシーンだし、ラストシーンの難解さは、アクション映画として観に行った観客は完全に置き去りです。
往年の優作アクション映画を期待してみては絶対にいけません。優作主演物は、制作年を下りつつ観ると彼の変遷が分かります。そういう意味で、意図的にアクションと訣別した作品がこの「野獣死すべし」なのでしょう。
原作にあるような野性的な伊達邦彦を狂気の男に変貌させる為、1ヶ月で8kgもの減量をしたり、上下の奥歯を4本とも抜いたり、更に身長を低くする為なら骨を削ってもいいとまでいってこだわった。しかしこの彼の思いこみは、角川春樹プロデューサー、原作者大藪春彦、監督すら、彼の作ってきた伊達邦彦の造形に激怒したといいます。
どちらが正しいかは分かりませんが、そうまでして自分なりの表現をした松田優作という人はすごい。すごいけど、もう少し周りの協力を得る為にもコミュニケーションをしっかりとしてみんなで作り上げた方が良かったんじゃないの?と思ったりします。
単体ではあんましお勧めしません。観るなら、遊戯シリーズ→蘇える金狼→野獣死すべしと順を追ってみると面白く観れるかもしれません。
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