1990年黒澤明監督。
上映の時も観ていますし、DVDでも何度か観てます。今日は何を観ようか迷ってた時に目に付いたので。
黒澤監督の見た8つの夢を映像化したオムニバスもの。フィルムにはタイトルは出てきませんが、それぞれ、
「日照り雨」
「桃畑」
「雪あらし」
「トンネル」
「鴉」
「赤富士」
「鬼哭」
「水車のある村」
という名前が付いています。元々、さらに3本「飛ぶ」「阿修羅」「素晴らしい夢」という脚本があったけど、予算他の都合で割愛。
この8本の中で、今是非見てほしいのは、「赤富士」。原発6基が爆発して、赤く染まる富士山を背に逃げまどう人々。子どもを抱えた女(根岸季衣)は、「原発は安全だ!危険なのは操作ミスで、原発そのものに危険はない。絶対ミスはないから問題ないと抜かしたのはどこのどいつだい!!」と叫ぶ。操作ミスどころか、一発の地震、津波で、故郷を追われた福島の人々の叫びが、20年以上前に黒澤によって映画化されている事に戦慄すら覚えます。
「夢」は黒澤監督80歳の時に公開されてます。一番油の乗った頃の「赤ひげ」以前の作品と比べると、いささか説教くさい感は否めない。公開当時も酷評の嵐でしたが、東日本大震災後、原発問題が現実となった今こそ、「自然との共生が人間にとって一番良いものだ」という直接的なテーマが分かりやすく表現されている映画で、後年の黒澤映画の中の代表作といえます。
この8本の中で、自分が好きなのは最初の2本「日照り雨」「桃畑」と一番最後の「水車のある村」。特に水車のある村は、日本人といわず、自然との共生の末に行き着く人間として本来あるべきコミュニティが示唆されていて大変心地よいエンディングです。
海外資本(ワーナー)で作った映画なので、他の黒澤映画と異なり、DVDが安く手に入るのも良いです。
お勧め。
- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
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