横浜美術館で、「松井冬子展」を12月からやっていて、行きたいと思っていたんですが、本日最終日やっと重い腰を上げて行ってきました。
松井冬子さんを知ったのはいつごろだろう?異様な作品を描くすっげー美人の日本画家がいるというのを知って、いろいろと調べたのが最初。その頃の写真が上の写真。
今も勿論美人なんだけど、まるで銀座のマダムのような感じになっちゃった。
日本画というと花鳥風月や美人画が多いですけど、この人の作品は徹底して幽玄。内蔵をはみ出させた女が、闇の中で微笑んでたり、同じく内蔵はみださせて横たわる女性の脛に"サルノコシカケ"が生えている絵とか、半分胴体が食いちぎられたような双頭の蛇が鎌首をもたげていたり。幽霊画なんかもある。
女子美短大を卒業後、就職、5度の受験で東京芸大日本画科に入学、その後芸大大学院日本画科博士課程を修了し、東京芸大初の女性美術博士号取得。
卒業制作の作品のタイトルが今回の個展のタイトルともなった「世界中の子と友達になれる」という作品↓。
これ、ぱっと見、女の子が藤棚の下で遊んでいるような感じに見えますが、藤の花の先端の黒いところは、無数に連なったススメバチだったり、女の子の手足は血にまみれていたり、女の子の後ろには白いゆりかごがあったりする、見れば見るほど不気味で、でも吸い込まれるほど美しい作品。結構大きかった(1818mm×2278mm)。
この構図を決める為に何枚も習作をしているのですがこれがまた精緻ですごい。
この人は、徹底して女性(メス)しか描かないらしい。雌の持つ神秘性をこれほどまであからさまにすると、さすがに男性は引いてしまいます。今日も最終日のせいか、たくさんの人がこの個展を見に来てましたが、男性は数えるほどで8割9割は女性でした。男性って、多かれ少なかれ女性に幻想を抱いているもんです。それを打ち砕くかのように、血を流し臓物をあらわにする絵の迫力に息を飲んでしまいます。
行きがけの電車の中で「八日目の蝉」を読んでました。出てくる男性はすべて不甲斐ない男ばかりで、それに対比するように強い女たちがいて、これもまた、徹底したフェミニズムの内容でした。
「戦後強くなったのは女と靴下だね」というフレーズがかつて流行ったことがあるそうです(1953年)。そんな時代を越えて、女性が、男性の社会にどんどん進出してきたのは、悪いことではないと思う。でも男性と女性どちらが強いかというとそれは間違いなく女性だと思うんですよね。そんな女性に浸食されたら男性はいらなくなっちゃうんじゃない?
松井冬子展をカミさんと久しぶりにデートして観に行ったはいいけど、帰りの電車の中で、「やっぱ男は女性に勝てない」と確信した今日でありました。
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