角田光代著 中公文庫。
「観てから読む」はの私としては、珍しく先に読んでしまった。
先日「日本アカデミー賞」を見るともなしに観ていた時、この映画版が最優秀作品賞を受賞していました。丁度前の本が読み終わって「次何読もうか」思案中だったので、カミさんが文庫を持っていたのを知っており借りて読むことにしました。以前は、読む本のジャンルが違っていたので、カミさんと本の貸し借りしてなかったんですけど、最近は年に数冊は借りて読んでます。
タイトルの「八日目の蝉」とは、蝉って7年幼虫で土の中にいて、外に出て成虫になっても7日目には死んでしまう。殆どの蝉が、7日で死んでしまうのに8日目まで生き残った蝉は…という意味。物語のテーマとなる事なので、ここまで。
妻子ある男と不倫していた主人公希和子は、一度でいいから、男の家庭を見たくなり、誰もいない彼の家に忍びこむ。そこには、生まれたたばかりの赤ちゃんが。希和子は、むずかり出した赤ちゃん恵理菜を衝動的に抱きかかえ、そのまま持ち去ってしまう。赤ちゃんに薫と名付け、逃亡生活を始める希和子。様々な人の善意を得ながら4年の歳月が流れるが、偶然アマチュア写真家に撮られた写真が全国紙に掲載されてしまい、逮捕。
その後、大学に入学し一人暮らしを始めた恵理菜の物語になる。居酒屋でバイトをしていると、彼女の元に、かつて逃亡生活の時の知り合いが突然やってくる。その頃の恵理菜は、かつて自分を誘拐した希和子同様、妻子ある人との関係に悩んでいた、みたいな話。
登場人物のほとんどが女性で、男性で出てくるのは希和子の不倫相手と恵理菜の不倫相手だけ。この碌でもない男に振り回される2人の女性を軸に、様々な女性たちが、ふたりをとりまく。女性の強さ弱さがこの物語に詰まっていて興味深い半面、男としては正直面白くない。いや、男にはこういう狡い側面は確かにある。しかし、表層的にしか男を見ていない描き方はいかがなもんか。
社会を構成しているのは、女だけでなく、男女揃って初めて社会を形成できる、と私は思っています。狡いのだってお互い様。損をするのは女ばかり的な考えは判らないではないけど、それもやっぱりお互い様だと思います。フィクションに目くじらを立てるのは莫迦らしいとは思います。でもこういう物語がもてはやされて、「だから男なんて…」と思う女性が増えるのは哀しい。女性も男性も、否、性別を越えたところで思いやりを持って、お互いを尊重し合う事ができる、それが人間だと思うのです。男の嫌な面を強調し、女性の強さや被害者意識を誇示するようなこういう作品を持ち上げるのは、どーも納得いきません。
文章は上手いのでとても読みやすいです。女性には面白く読めるんじゃないかな。
さ、映画を観てみるとしますか。
- 作者: 角田光代
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2011/01/22
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