17日、BSでやっていたものを録画。休みでしたのでゆっくりと鑑賞。完全版は、195分(3時間15分)ですが、今回の特別篇は2時間20分の短縮版。それでも「黒部の太陽」がTV放映されるのは、1979年以来実に33年ぶり。裕次郎さんが、「こういう作品はでっかいスクリーンで見るべき」という言葉で、こんなにも長い間封印されてきました。数年に1回特別上映されていたらしいですけど、それもこの短縮版。公開以来完全版がTVで放映されることはなく、完全版の上映は2回あったきりと言います。当然、ビデオ化、DVD化もされていないまさに幻の名作です。
そんな作品が、短縮版とはいえやっと観ることができて感激でした。
お話は、関西電力黒部第4発電所、通称黒4ダム建設、資材運搬の為に長野県大町から黒部渓谷にのびる総延長5400Mの大町トンネル(現:関電トンネル)開通工事の話。このトンネルは、フォッサマグナ地域にある中央構造線(糸魚川静岡構造線)を横断する形で掘り進められる為、途中破砕帯を越えなければならないことが予想されていました。破砕帯というのは、断層面同志が力を加え合っているところで、その圧力の為岩盤が細かく砕け、その隙間に地下水が多く含まれている場所の事。トンネル工事でこれに当たると、大量の水が噴き出し先に進めなくなってしまう。大町トンネルでは、この破砕帯が80mもあり、1日の掘削が、数センチという日がずっとつづいたといいます。
日本が高度経済成長で電力需要が増していた頃、この黒4ダムは当時日本の繁栄に欠かせないものでした。施主である関西電力、請け負った間組、鹿島建設、熊谷組、佐藤工業、大成建設、下請のトンネル掘りのプロたちが一体となってこの国家的難事業を成し遂げた姿は、感動的。実際は、下請け泣かせの現場だったとか、あんなに上品なもんじゃないという声も漏れ聞こえてきますけど。
制作は、石原プロと三船プロ。当時映画は、映画会社が作るもので、独立プロで作っても興行が難しかった。しかも5社協定でスタッフ、役者を調達することも大変。そんな苦労をしながら映画製作に打ち込む裕次郎と三船の姿とトンネルを掘る2人の姿がオーバーラップする、ということをバックボーンとして知っていると、この映画を更に楽しむことができますね。
さて、今週末は、東京国際フォーラムで、44年ぶりの完全版上映です。勿論早々にチケット購入済。楽しみ〜。