日々雑感っ(気概だけ…)on Hatena Blog

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「黒部の太陽」完全版 を観る

 
 いよいよこの日がやってまいりました。
 先日BSで特別篇(2時間20分の短縮版)をやりましたが、ついに3時間15分の完全版上映です。昨日今日と、東京国際フォーラムにて「裕次郎の夢」というタイトルでこれまでソフト化されていない2本「栄光への5000キロ」と「黒部の太陽・完全版」の上映会がありました。
 ジャンルは微妙に違いますが、同じく映画好きのカミさんと同行。図らずも先週の「松井冬子展」に続き2週連続でデートです。
 
 「黒部の太陽」は1968年の映画。裕次郎さんの「こういう映画はでっかいスクリーンでみるべき」という生前の言葉を頑なに守り、テレビ放映、ソフト化をされず今日に至りました。スクリーンでは、特別上映として数年に1度上映会が開かれていますが、殆どが短縮版の方で、3時間の完全版は、公開終了後2回しか上映されていないそうです。今回のBSでの放送が、33年ぶり、完全版の上演は44年ぶりだから当然観たことない、まさに幻の作品。それをやっと観ることができて感無量でした。

 結論から言えば、完全版は短縮版とは全く別物と考えて良いと思います。ストーリーの中心は、大きく4つ。
 1.黒4ダム建設の為の大町→黒部渓谷までのトンネル掘削の話。
 2.その建設に携わった工事責任者北川(三船敏郎)の苦悩の話
 3.同じく直接工事に当たった現場作業員・岩岡(石原裕次郎)とトンネル掘りの親方である父親源三(辰巳柳太郎)親子の話
 4.第4工区(佐藤工業担当)の森(宇野重吉)と息子賢一(寺尾聰)の話。
 
 短縮版では、4の宇野重吉寺尾聰の話をばっさり。三船敏郎の娘が白血病に侵され三船とその家族画苦悩する話もかなり切られ、更に石原裕次郎が、何故親父に反感を持つのか語る部分がすべて切られている。更に金の亡者血も涙もない源三の苦悩もない。数年後完成した黒4ダムに黒部川から裕次郎が、大町側からあのトンネルを三船が進む。三船は破砕帯の手前でトロリーバスを降り、破砕帯80mを歩く。「破砕帯おわり」の看板。こんな大切なシーンもカットしてしまっているので、短縮版は単なる土木映画になってしまっている。
 
 いくら美味しくても、ステーキだけでは食えない。付け合わせの野菜やスープがあって初めて料理全体を楽しめる。1時間近いカットは要はそういうものでした。宇野重吉、寺尾聡親子の話があるから、そのコントラストとして岩岡親子があり、三船敏郎の、仕事に打ち込む男の影で家族の苦悩があるから、男の仕事に対する思いがより強烈に画面に現れ、観客の涙を誘う。

 破砕帯の出水シーンは確かにすごい。今であればCGを使い更に迫力の画作りはできるでしょうが、実物大、全長200Mのトンネルのセットを組み上げ、その中で420tの水を一気に流す事で作った画とは、その質感は全く異なります。

 この大出水シーンで、プツリと切れ「休憩」の文字。第1部終了。3時間を越える映画ですから、途中でインターミッションがあるんですね。みんな手に汗握っているところでの休憩ですから、観客の気持ちは最高潮。ニクい演出です。
 第2部は、この破砕帯に対する対策が課題。しかし、どんな手を打ってもなかなか解決の糸口が見えない。1日に数センチしか進まない日が延々続きます。苦悩する責任者たち。万策尽きて心が折れる労働者たち…。そんな時戦前からのトンネル掘り源三は、北川(三船)にこういいます。
「土方に白い歯見しちゃ、トンネルは抜けませんぜ。あんたがたはいつ崩れるか、いつ崩れるかそんなことばかり考えてるから土方はへっぴり腰をしてやがるんですよ。」「北川さん土方っていう奴はね、技師さんが大丈夫って言やあ、大丈夫なんですよ。自信、自信ですよ」と。

 乱暴な言い方ですが、リーダーシップの側面の一つであることは間違いありません。リーダーが迷っていては、部下は更に迷い、前進することはできません。どんな事があろうと責任を取るから、自分の示す方向に前進せよと言い切るリーダーがいれば、少なくとも部下は疑問をさしはさむ事はありません。部下のやる気だとか、自主性とかいって責任者が自分の責任すらとろうとしない軟弱な責任者が増えるから、大きな仕事が成し遂げられない。今の閉塞状況を生んでいるのは、こういう軟弱なリーダーが増えたからに他ならない、と思います。

 というわけで、無事映画は終了。会場は拍手につつまれました。映画を観て拍手をするのって何度か経験ありますが、やっぱいいですね。

 帰り際、出口でお土産を戴きました。
 「石原裕次郎カレンダー」
 「石原軍団用焼き肉のたれ・ドレッシング2本セット」
1,000円で幻の大作を観ることができ、しかもお土産付きとは、さすがやることが石原軍団。別に裕次郎ファンではないから、カレンダー貰っても(^-^;)ですけど、このおもてなしはすごいです。
 
 年齢層は比較的高めでしたね。古い日本の映画に価値を求める若い人はなかなかいないもんね。仕方ないか。
 でも「黒部の太陽」は、是非観てほしい名作です。できれば短縮版ではなく、完全版を。
 来年とうとうソフト化されるらしいので、今から楽しみです。
 石原プロの皆さま、とても良い企画でした。ありがとうございました。


なお、この「裕次郎の夢」企画は、これから全国縦断で行われるそう。とりあえず九州、信越地区の日程が決定との事です。詳しくは↓
http://www.ch-ginga.jp/special/yujiro.html