日々雑感っ(気概だけ…)on Hatena Blog

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「凶悪―ある死刑囚の告発―」 を読む。


 ノンフィクションものって結構好きです。「事実は小説より奇なり」といいますが、しかしいろんな事が世の中では起こっていて、自分が本を読んだり映画を観たりするのが好きなのも、自分ひとりの人生では体験できないようなことを知ることで経験値が上がるような気がするからです。

 さてこの本。著者は『「新潮45」編集部編』となっていますが、主筆は「新潮45」の現編集長宮本太一氏です。宮本さんが、別件で知り合い現在東京拘置所に拘留中の某被告から、「重大な情報したので、是非合わせたい人がいる」という連絡を受ける。それが、後に「上申書殺人事件」と呼ばれる事件の始まりでした。
 紹介されたのは、確定死刑囚の田中良次。田中が上申書で述べた内容は、"先生"と呼ばれる不動産ブローカーの指示による3件の殺人。死刑囚が更に3件の殺人事件について告白する。勿論それによって、自分の死刑執行が伸びるというのもある。しかし彼が告白をする理由は、自分が死刑になる前に本当の悪人を糾弾することでした。
 資産家や土地持ちが人知れず失踪したり不審死を遂げる。"先生"を中心にそんな事件がたくさんあった。田中の関与した3件の事件は発生から時間が立ち過ぎて、決定的な物証に欠ける。1件だけが関係者も多く自白を得られ立件。その事件は保険金殺人。しかも、借金精算の為に家族が承諾したものでした。
 世の中には、家出人捜索願が年間で8万人以上出されています。様々な理由で自分の意思で失踪する人はまだよい。しかし、北朝鮮の拉致や遊び目的の誘拐監禁、そしてこの事件のような金品略取の為に誘拐、そして闇から闇に葬られている人も現実にいるに違いない。
 持たざる者が持つ者に対する嫉妬、恨みを持った犯罪は、それこそ人類始まって以来数限りなく起きている。しかし一時的に満足しても上見りゃきりないから、更に蓄財に奔走することになる。でもね、こういう話を見聞きすると、被害者を手玉に取っているように見えて、実は犯罪者そのものが無限地獄に陥っているんじゃないかと思うんです。
 欲を持つ事は人生の糧になる。それは間違いないことだけど程度問題で、必要以上に欲すること・貯め込むことで、哀しみをも一緒に貯め込んでしまうものなんですねぇ。

 平成19年にハードカバーで上梓されていたものが、21年に文庫化されています。文庫化の際に、その後の展開を追記していますので、読むならば文庫版をお勧めします。

凶悪―ある死刑囚の告発 (新潮文庫)

凶悪―ある死刑囚の告発 (新潮文庫)