2010年・森田芳光監督。
元となったのが、新潮新書で紹介された磯田 道史著「武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新」。実際に発見された加賀藩で代々ご算用士を勤める猪山家のプライベートな入払帳(家計簿)と江戸に単身赴任をしていた時の本宅との書簡を紹介した内容です。これ昨年11月にに読んでます。その時の感想blogは↓
http://d.hatena.ne.jp/hee/20111017 にあります。
そもそも小説ではなく、更に「事務職」の武士の話なので、山場を作る事は難しく、映画としての面白さは、武士らしい斬る斬られるという話ではないところにしかない。何しろ、1度も剣を抜く事が無いどころか、家計の為に脇差を故買商に売るシーンまで出てくる。もっとも、武士といっても藩の会計課勤務なわけで、裃を付けた武士が学校形式に文机を並べた広間に揃ってそろばんをはじく姿は、これまで映像化された事はないと思うので、みどころではあります(「たそがれ清兵衛」も城勤めの武士の話でしたが、算用方ではありませんでした)。また、困窮する武士がプライドを捨てて嫡子のお祝いの席に鯛の尾頭付きを用意できず”絵”で代用するあたり、大変ほほえましくて、優しい気持ちになります。
猪山家7代目の信之(中村雅俊)、8代直之(堺雅人)、9代目成之(伊藤祐輝)の3世代に渡る物語を129分で描く事にも無理があって、結局、直之の時代に猪山家の家系が大逼迫し、家計を立て直すシーンが中心にせざるを得ないのも仕方がない。
武士とはいっても、いつも刃傷をしているわけではなく、実際は地味な宮仕えで、様々なしきたりを疎かに出来ない為生活は大変厳しかったというのが良く描かれていて、こういう作品も私的にはありかと。
この映画をみて、このお話に興味を持ったら、7代目、9代目についても詳しく触れられている新潮新書版を読まれるのが良いと思います。
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