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「ワイルド7」 を読む。

 奥村 千明 著(原作:望月 三起也 脚本:深沢 正樹)・小学館文庫

 「ワイルド7」は、少年キングに連載された望月 三起也の漫画。TVシリーズもあって私はTVみて「かっちょえ〜」って思ったのが「ワイルド7」体験の始まりです。
 今回の小説版は、映画化された脚本をもとにノベライズ(小説化)したもの。小学館文庫では、映画公開に合わせてのノベライズを精力的にやっていますね。

 映画原作も映画をより深く楽しむための必須アイテムではありますが、実はノベライズも単に映画を小説化しただけではないのです。読んだことのある人は判ると思いますが。
 大体の場合、ノベライズの企画は、映画制作と同時に始まります。それは、映画公開に合わせて(もしくは公開前に)店頭に並べる必要があるからです。という事は、映画完成後から書き始めたのでは間に合わず、脚本が完成した段階でそれをもとに書き始めるわけですね。映画の場合、現場で台詞が変わることは日常茶飯事だし、ロケ地や俳優、そして当然予算絡みで、脚本は何度も書きかえられますから、何番目の脚本を元に書き始めたかにもよりますが、映画に補完する情報がたくさん含まれています。
 どうしても映像化できなかった部分や、より深く内容を知る為には必要であるものの、時間的にやむを得ずカットせざるを得なかった物語や行動の背景が初期の脚本では残っている事がままあります。小説と映画という媒体の違いでもありますが、映画では俳優さんの演技を中心に視覚的にしか内面の表現はできませんが、小説は、それを文字化する必要があります。集中して観ている映画でも見落としてしまうことは良くあります。そんな時、ノベライズで振り返ったり、その時の登場人物の心情を確認するのは映画を良く理解する為にはとても有効です。
 
 ノベライズというと原作より一段下に見られがちで、「原作よんだからいい」と敬遠される方がいますが、先日読んだ映画「ハゲタカ」の原作「レッドゾーン」もそうですが、映画とは全く異なるものも多くあります。それは、原作は映画にとって大切なものではありますが、あくまでも監督にとっては素材でしかなく、原作世界の空気は生かしつつ、監督の作家性は否応なく入ってきますし、逆に原作をそのまま映像化するのであれば映画の存在理由はありません。
 原作によって触発された監督の感性が、画面に反映されます。しかし、小説にせよ漫画にせよ一人の作家によって描かれるものと異なり、映画はたくさんのスタッフによる共同作品ですので、それら様々な人の想いが結実した作品とは自ずと異なるものであるのは間違いがないこと。
 私はそれを「ノイズ」(雑音)という言い方を良くしますが、決して悪い意味ではなく、芸術はすべからくノイズの集合体で、それら表現者のノイズのバランスが高い芸術性を生むと思うのです。


 話がそれました。
 というわけで、私、ノベライズ肯定派です。
 「ワイルド7」も映画だけでなく、この小説版を読むことで評価が少しアップしました。
 映画を観たら、原作があれば原作を、ノベライズがあればそれも読むことをお勧めします。

 あ、映画は今年1月に観ました。その時の感想は↓に
 http://d.hatena.ne.jp/hee/20120108


ワイルド7 (小学館文庫)

ワイルド7 (小学館文庫)