作者は、1989年・平成元年生まれ。そうか、もう平成生まれが活躍する時代になったんだよね。。
バレーボール部のキャプテン、頼れる男桐島くんが部活を辞めた。ただ桐島くんそのものは会話の中にしか出てきません。マクガフィンのような存在とでもいえばいいのか。
物語は桐島くんがバレー部を辞めたことが同じバレー部内だけでなく、クラスメートにも様々な波紋を起します。物語は5人の同級生たちの生活をオムニバス形式で物語を並べていて、桐島君退部ということが友達同士の会話の中で語られつつ、夫々の生活の中で感じる色々な悩み、想いが綴られています。
章立ては
同じバレー部の小泉 風助
ブラスバンド部部長の沢島 亜矢
映画部で地味な前田 涼也
ソフトボール部で家庭の悩みを抱えている宮部 実果
そして、冒頭と最後に出てくるのが、野球部だけどあまりにもの自分のレベルが高い為、試合にしか出ない菊池 宏樹。
文庫版では、バトミントン部で中学時代は映画部の前田君と仲の良かった女子、東原 かすみの中学時代が追加されてます。ので文庫版の方がお勧め。
この中で、高校生って「上」と「下」に分けられるという話がある。男の子であれば、かっこよくて、スポーツができて、いつも騒いでいるような目立つグループと、文化部、帰宅部で休み時間も小さく固まってつるんでるグループ。女子であれば、やっぱりスポーツ部で、可愛くて明るい集団。これは、小学校、中学校でもあって、特に中高は顕著になる感じ。当然女子の注目を浴びもてるのは前者のグループ。
私、中学3年間と高1までバスケット部やってたけど、それほど上手なわけでもなかったし、同じ学年で40人もいては、レギュラー5人のバスケットでは、正選手にもなれなかったんで、全然もてなかったですねぇ。精神的には後者グループに、よりシンパシーを感じてたし。好きなのが、漫画とアニメとプラモでは、勝負はついたようなもんです(^-^;)。だからどっちかっていうと私は「下」のグループ。
「上」のグループって、高校時代たぶん楽しかったと思うんですよね。まさに青春って感じで。私、大体学校と家の往復で3年間終わってたので、女の子とデートしたとか全然なかった。"付き合う"っていうのも意味がわからなかった。田舎だったせいもあるけど、いまみたいに気軽に遊ぶところなんて殆どなかったし。男同士でつるんでる方が面白かった。ただ今考えてみると明らかに「青春」を楽しんでいるグループは確かに存在しました。
この物語は、それぞれの一瞬を切り取っているので、起承転結はありません。だから、もう少し彼(彼女)の行く末を知りたいと思ってもそれは描かれていません。それに否を唱える人も多いですが、こういう話もありかなと思います。たまに出てくる言葉が見事にこれくらいの年齢に感じた事を表現しています。物語が文字で紡がれている意義は、送り手(作者)が、どこまで正確に自分の想いを読者に伝えるか。その言葉選びが的確かにかかってくると思います。そういう意味では、弱冠19歳で描かれたこの物語は、受賞(2009年・第22回すばる文学新人賞)に値すると私は思います。
8月にこれを原作とした映画が公開されます。オムニバスストーリーを映画部の前田君を中心に1本の物語にしているらしい。ちょっと楽しみです。
- 作者: 朝井リョウ
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2012/04/20
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