いつも通勤時は、文庫本を読んでいるんですけど、今月から新宿南口で降りるようになってからというもの満員度合いがハンパなく、文庫本を開くことすらまままならないので、仕方がないからスマホの青空文庫アプリで本を読んでます。「そこまでして本読まなくてもいいじゃん」という諸姉諸兄。活字中毒というのは、常に活字を追いかけていないと気が済まない人種なんです。スマホがない時は、中吊り広告やドア上の広告を隅から隅まで読んだもんです。
で、最近ハマっているのが、伊丹万作の著作。「マルサの女」の伊丹十三の父上、映画監督、脚本家です。名作「無法松の一生」の脚本を書かれた人ですね。
とりあえず今日読んだのは、4社協定(後の五社協定)について書かれた「映画界手近の問題」(初出「改造」昭11年8月)と、映画と音楽の関係に書かれたエッセイ「映画と音楽」(「伊丹万作全集」昭36年8月)。
映画会社のスタッフ、俳優の囲い込みは戦前からあったんですね。それにしても、経営者の気持ちは判らないではないけど、あまりにも自己利益を追求し過ぎる。純粋に娯楽として、芸術として映画を作っている"映画人"の気持ちを踏みにじる当時の様子がすごくよくわかって興味深い。
「映画と音楽」は映画と音楽の関係を述べたもの。伊丹万作は戦前の映画監督・脚本家さん。「音楽ははたして原則的に映画に必要なものであるだろうか。」と疑問を呈する。森田芳光監督は「家族ゲーム」で一切の音楽を使わなかった。じゃこれが映画として優れていないかと言うと決してそんなことはない。不可分と思われていた映画音楽についてハッと考えさせられます。当時に比べれば器用な作曲家が増えたのかもしれないけど、余りにも画面とあっていないBGM、タイアップのエンディングテーマは正直不要だと私も思います。あと同じテーマで曲調を変えただけの手抜きもなぁ。ホント、音楽と画面が完全にフィットした映画というのは名作の条件。
青空文庫にある伊丹万作の著作は23篇。映画好きなら面白く読めます。しかも青空文庫、パブリックドメインなんで無料。なんていい時代!
(青空文庫 伊丹万作のページ)
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