日々雑感っ(気概だけ…)on Hatena Blog

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「ホーラ―死都―」を読む。


 篠田節子著・文春文庫。

 短編も長編も面白い篠田節子の作品は、文庫化されたものは殆ど読んでます。この作品はちょっとホラーチックな純愛小説。不倫ものを純愛小説と言っていいか疑問ですけど。

 才能のある夫に凡庸な音と言われてしまうバイオリニストと地位も名誉もある建築家。年に数回逢瀬を重ねていたが、ある日男性からギリシャ旅行に誘われる。全てのしがらみから離れるようにアテネの小島に行く。そこは"ホーラ"と呼ばれる廃墟の街があり、そこでバイオリニストの女性は幻影を見る。廃墟からの帰り、有るはずのない石がブレーキに挟まり、交通事故にあってしまう。男は診療所に入院するはめになるが、一向に回復しない。一方、バイオリニストの女性が男からプレゼントされたスクロール部(渦巻のところね)に女性の顔の彫られた奇妙なバイオリンを旅館の女主人は「悪魔が付いている」という。3日間の小旅行のはずが、思いがけない悪天候で小島に足止めされた二人。幻視を誘うホーラの謎。二人の行く末は…、って感じの話。

 不倫をした罰というような単純な話じゃありません。取り様によってはそういう見方もあるかも知れないけど、それよりも、芸術と魔的なものとの親和性や近似性について描かれているような気がしました。しかもそこに絡め取られるか否かは、自身の精神力の強さにかかっているとも。
 
 描かれるホーラは魔的な魅力を備えていて、読み進めていると怖いんだけれどもそういう退廃した世界に対する憧れも一方で感じます。しかし、凡才極まりない私にとっては、都市に魅入られる事なんかなくて単なる廃墟にしか映らないんだろうなぁ。

 篠田節子にしては、普通。決してつまらない作品ではありませんが、これよりも魅力的な作品はいっぱいあります。

ホーラ―死都 (文春文庫)

ホーラ―死都 (文春文庫)