日々雑感っ(気概だけ…)on Hatena Blog

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「オレたち花のバブル組」を読む。

 池井戸潤・文春文庫
オレたち花のバブル組 (文春文庫)

 
 半沢直樹シリーズの続編。ドラマの後半部分の原作です。
 支店長と共謀して、計画倒産をした東田から5億の再建を回収し、不正を暴露しない代わりに東京への栄転を手にした半沢が、頭取から指名を受け新たに担当するのは120億の負債のある伊勢島ホテル。しかもこの問題が、金融庁検査の俎上にあり、安全な融資先に認められないと銀行が傾きかねない非常事態になる。さて半沢は社内外の妨害にどう立ち向かうか…、という話。
 ドラマと基本的な流れは一緒。ドラマが毎回ハラハラドキドキの展開だったので、かなり脚色してるんだろうなぁと思ったんですが、意外に原作通りの展開に驚き。
 この巻は、半沢の活躍と同時に、同期で融資先のタミヤ電機に出向している近藤の動きが半沢の行動と並行して描かれます。出向先で「銀行さん」と社長や部課の経理課長にも莫迦にされ常に蚊帳の外に置かれる近藤が、会社の不正経理を発見しそれを追求する。
 ドラマでは、いよいよ精神的に追いつめられた近藤が、半沢によって昔の気概を取り戻すとなっていましたが、原作では、自らこの状況を変える為に立ちあがります。この差は大きい。ドラマは半沢が主人公だから仕方ありませんが、近藤の弱さがどうしても目立ってしまいます。だから、近藤が大和田常務の口車に乗り、本社に戻る為調査報告書をもみ消しに同意した時、近藤に感情移入ができなかったのですが、原作を読んでいると近藤自身が切り開いた結果だということが強く表現されているので、半沢が近藤を許した事もしっくりと来ます。原作は、半沢と近藤の問題を均等に描いている結果です。


 中盤で近藤と田宮社長、経理課長の野田と話す場面で、近藤は出向後の自分の心境をこう述懐します。
 「仕事は二の次で、余暇を楽しめばいい、そう考えた事もある。しかし、1日の半分以上も時間を費やしているものに見切りを付けることは人生の半分を諦めるのに等しい。誰だってそんなことはしたくないはずだ。いい加減に流すだけの仕事ほどつまらないものはない。そのつまらない仕事に人生を費やすだけの意味があるのか?」(216-17頁)

 グサリと来ました。
 誓っていいますが、いい加減に流してはいません。とはいえ人生を賭けるほど集中しているわけでもない私。この近藤の心情の吐露は、全てのサラリーマンが一度は考える事です。
 人生はいろいろあって、正解はそれぞれがもっているから一概にこれが正解ですとはいえないと思います。ただどんな状況であれ、仕事をいい加減にしてはいけない。いや仕事だけでなく、自分ひとりなら何をどうしようと結構ですが、所属するコミュニティに対しては常に真摯に取り組むのは、絶対に必要な事。近藤は、仕事について言及していますが、いい加減に対応することは、どんな場合もしてはいけないと思います。


 こういう心に響く言葉に出逢えたというだけでまずは満足。
 ドラマだけしか観ていない人は、是非原作を読んで欲しい。
 逆に原作しか読んでいない人は、ドラマ版も観てほしいです。
 演出、脚本、俳優全てほぼパーフェクトな近年稀に見るいい映像化です。
 年末年始再放送したら、是非ww