南三陸町で津波の後素人ばかりで運営するラジオ局「FMみなさん」が開局しました。このラジオで働く人々と、それを聞くことで元気を取り戻していくリスナーを追いかけたドキュメント映画です。しかし過剰な演出があったという問題が発覚しました。
問題となったのは、おばあさんがFMを聞いてよかった、励まされたと語るシーン。実際はFM放送を聞いておらず(住んでいるのはFMの電波が届かない地域だったらしい)、監督から番組を録音したCDを渡されてそれを聞き、あたかも毎日FMを聞いていたように"演技"を指示されたのだそう。
ドキュメンタリーだって映像作品であることは変わりなく、カメラワークや音楽そして編集による作品としての起承転結をつける。そういった作業上の演出ではなく、被写体に演技をさせてしまっては、もはやドキュメンタリーとはいえない。
3月1日のblogでNHKのドラマ「ラジオ」に就いて書きました(→ http://d.hatena.ne.jp/hee/20140301)
同じ被災地のFM局を扱ったものですが、こちらは事実を元にしたフィクション。園子温監督の「ヒミズ」も震災後津波被災地に入り撮影した映画でした。
確かにドキュメンタリーとして被災地の状況を伝えるのは大切な事ですが、ドキュメンタリーにこだわらなくても、被災地、被災者の心情を表現することはできるし、ドラマにすることで、より被災者の気持ちに近づくことだってできる。要は、演出する人の技量の問題。
今回の報道が真実であれば(監督やプロデューサーが謝罪しているから真実なんでしょう)、とても哀しい事。
被災地はまだまだ支援が必要と感じます。だから映画やTVで間断なく現地の状況を伝えることは、まだまだ大切な事です。このことがきっかけとなって、これから表現者として被災地にアプローチをする人の腰が引けない事を切に願います。