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「激動の昭和史 沖縄決戦」を観る。

激動の昭和史 沖縄決戦 [東宝DVDシネマファンクラブ]
 1971年東宝制作・岡本喜八監督。

 
 エヴァンゲリオン庵野監督絶賛の1本で昔から観たかったんです。amazonで買っちゃいました。
トップをねらえ!」で「宇宙が黒く見えない」や「敵が7分で黒が3分 、いいか 敵が7分に黒が3分だ」というセリフが出てきますが、その元ネタがこの映画。

沖縄上陸に際して、
 斥候の賀谷支隊長が指令本部に無線でこう伝えます。
「本島西海岸一帯は米艦艇のため海の色が見えない!!」
三宅忠雄通信参謀「何!? 海の色が!? それじゃわからん!!」
賀谷支隊長「船が七分に、海が三分! 船が七分に海が3分だ! わかったか!!」

 東宝好きな私としては、オールスターキャスト、特殊技術は中野昭慶、美術は村木与四郎ときてはいやがうえにも盛り上がります。
 メインキャストは、小林桂樹丹波哲郎仲代達矢ですが脇に加山雄三天本英世岸田森、女優では酒井和歌子大空真弓が出てました。


 ただ、そういう不謹慎な気持ちで観るには重い映画でした。149分、途中でインターミッションが入ります。
 太平洋戦争での激烈な地上戦は数あれど、沖縄戦以上に本土に肉薄した闘いはない。しかも沖縄県民の1/3が軍属、民間人問わず死亡したという。上陸軍の攻撃だけでなく、集団自決で死んでいったものも多い。集団自決シーンでは、1個の手榴弾を持ち家族が寄り添い点火し、最後死に切れなかった者同士で殺し合っていた。また、直前に迫った米軍兵士の捕虜になる位ならと家長が子どもの首元に鎌を立て頸動脈を切る。撤退を与儀なくされた野戦病院では、歩けないものは、毒薬と一緒にその場に残していく。追いつめられた女学生たちが先生から薬をもらい飲みほして苦しんで死んでいく。筆舌に尽くしがたいシーンの連続で観るに堪えないけど、これが戦争。。


 対比するように大本営では、沖縄守備隊の要求を悉く拒否し、本土決戦の時間稼ぎ位にしか思っていない。まさに「事件は現場で起きているんだ」という感じ。
 そんな中、自分の職務を全うしようとする大人たちがいる。
内務官僚だった島田叡(しまだあきら/神山繁)は、大阪府内務部長から沖縄県知事の内示を受ける。 戦火激しい中、なんとかして県民を守ろうと東奔西走する。当時、軍のいうことは絶対だったにもかかわらず、軍の作戦にまで口を出して県民を守ろうとする姿勢は涙なくしては見れない。
 もう一人は太田実海軍中将(池部良)。
 常に沖縄を守備すべく動いた人であり、最後の海軍次官にあてた通信電文はつとに有名です。以下その電文を転載します。


 発 沖縄根拠地隊司令
海軍次官
左ノ電□□次官ニ御通報方取計ヲ得度
沖縄県民ノ実情ニ関シテハ県知事ヨリ報告セラルベキモ県ニハ既ニ通信力ナク三二軍司令部又通信ノ余力ナシト認メラルルニ付本職県知事ノ依頼ヲ受ケタルニ非ザレドモ現状ヲ看過スルニ忍ビズ之ニ代ツテ緊急御通知申上グ
沖縄島ニ敵攻略ヲ開始以来陸海軍方面防衛戦闘ニ専念シ県民ニ関シテハ殆ド顧ミルニ暇ナカリキ
然レドモ本職ノ知レル範囲ニ於テハ県民ハ青壮年ノ全部ヲ防衛召集ニ捧ゲ残ル老幼婦女子ノミガ相次グ砲爆撃ニ家屋ト家財ノ全部ヲ焼却セラレ僅ニ身ヲ以テ軍ノ作戦ニ差支ナキ場所ノ小防空壕ニ避難尚砲爆撃ノガレ□中風雨ニ曝サレツツ乏シキ生活ニ甘ンジアリタリ
而モ若キ婦人ハ卒先軍ニ身ヲ捧ゲ看護婦烹炊婦ハ元ヨリ砲弾運ビ挺身切込隊スラ申出ルモノアリ
所詮敵来リナバ老人子供ハ殺サルベク婦女子ハ後方ニ運ビ去ラレテ毒牙ニ供セラルベシトテ親子生別レ娘ヲ軍衛門ニ捨ツル親アリ
看護婦ニ至リテハ軍移動ニ際シ衛生兵既ニ出発シ身寄無キ重傷者ヲ助ケテ敢テ真面目ニシテ一時ノ感情ニ馳セラレタルモノトハ思ハレズ
更ニ軍ニ於テ作戦ノ大転換アルヤ夜ノ中ニ遥ニ遠隔地方ノ住居地区ヲ指定セラレ輸送力皆無ノ者黙々トシテ雨中ヲ移動スルアリ
是ヲ要スルニ陸海軍部隊沖縄ニ進駐以来終止一貫勤労奉仕物資節約ヲ強要セラレツツ(一部ハ兎角ノ悪評ナキニシモアラザルモ)只々日本人トシテノ御奉公ノ護ヲ胸ニ抱キツツ遂ニ□□□□与ヘ□コトナクシテ本戦闘ノ末期ト沖縄島ハ実情形□一木一草焦土ト化セン
糧食六月一杯ヲ支フルノミナリト謂フ
沖縄県民斯ク戦ヘリ
県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ


(口語訳)
沖縄県民の実情に関して、権限上は県知事が報告すべき事項であるが、県はすでに通信手段を失っており、第32軍司令部もまたそのような余裕はないと思われる。県知事から海軍司令部宛に依頼があったわけではないが、現状をこのまま見過ごすことはとてもできないので、知事に代わって緊急にお知らせ申し上げる。
沖縄本島に敵が攻撃を開始して以降、陸海軍は防衛戦に専念し、県民のことに関してはほとんど顧みることができなかった。にも関わらず、私が知る限り、県民は青年・壮年が全員残らず防衛召集に進んで応募した。残された老人・子供・女性は頼る者がなくなったため自分達だけで、しかも相次ぐ敵の砲爆撃に家屋と財産を全て焼かれてしまってただ着の身着のままで、軍の作戦の邪魔にならないような場所の狭い防空壕に避難し、辛うじて砲爆撃を避けつつも風雨に曝さらされながら窮乏した生活に甘んじ続けている。
しかも若い女性は率先して軍に身を捧げ、看護婦や炊事婦はもちろん、砲弾運び、挺身斬り込み隊にすら申し出る者までいる。
どうせ敵が来たら、老人子供は殺されるだろうし、女性は敵の領土に連れ去られて毒牙にかけられるのだろうからと、生きながらに離別を決意し、娘を軍営の門のところに捨てる親もある。
看護婦に至っては、軍の移動の際に衛生兵が置き去りにした頼れる者のない重傷者の看護を続けている。その様子は非常に真面目で、とても一時の感情に駆られただけとは思えない。
さらに、軍の作戦が大きく変わると、その夜の内に遥かに遠く離れた地域へ移転することを命じられ、輸送手段を持たない人達は文句も言わず雨の中を歩いて移動している。
つまるところ、陸海軍の部隊が沖縄に進駐して以来、終始一貫して勤労奉仕や物資節約を強要されたにもかかわらず、(一部に悪評が無いわけではないが、)ただひたすら日本人としてのご奉公の念を胸に抱きつつ、遂に‥‥(判読不能)与えることがないまま、沖縄島はこの戦闘の結末と運命を共にして草木の一本も残らないほどの焦土と化そうとしている。

食糧はもう6月一杯しかもたない状況であるという。
沖縄県民はこのように戦い抜いた。
県民に対し、後程、特別のご配慮を頂きたくお願いする。


 この映画は沖縄が日本に復帰する1年前に制作されています。アメリカに統治されていて反感を買われては困るので、この映画の存在を知らない沖縄の人も多いそう。沖縄の人は勿論、最近近隣諸国との領土問題できな臭い雰囲気が出てきて、交戦是認を叫んでいる人に見て欲しい作品です。
 過剰な演出もない代わりに、恐らく現実はもっと悲惨だったと感じさせる作品。
 2時間半釘付け。