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「男たちの旅路第4部3話 車輪の一歩」


 1976年から82年まで、間をあけながら続いていたNHKのドラマ「男たちの旅路」の1本。脚本は山田太一
 第4部は1979年11月24日に初放映されています。第1部は1976年ですから小学5年生。第4部は中学2年生だったわけですが、当時観た衝撃は今でも忘れられません。


 「男たちの旅路」は、警備会社に勤務する鶴田浩二演じる吉岡が、森田健作や水谷豊や桃井かおり(1話では自殺をしようとするOL)、第2部からは柴俊夫、4部では清水健太郎、岸本加世子などの若いガードマンと接しながら、様々な問題に対して若者の考えと特攻隊員だった吉岡の古い世代の意見を戦わせつつ、物語が進行します。
 「車輪の一歩」は、身体障害者の問題を扱った一編。
 吉岡の所属する警備会社が担当しているビルの入口に、車いすに乗った若者(川島(斎藤洋介)、藤田(京本政樹)、浦野(古尾谷雅人)、吉沢(見城貴信)、日比野(水上功治)、阿川(村尾幸三))が集まっていて、通行人の邪魔をしている。ガードマンの尾島(岸本加世子)は、そこから退くように説得するが、その後、兄(清水健太郎)と一緒に住んでいるアパートに押し掛けられ、彼らに付きまとわれるようになる。彼らの意図は、身体障害者を邪魔もの扱いする2人へのいやがらせだった。

 尾島兄妹は、彼らの為に家を借りようと奔走するが、不動産屋から断られ続ける。車いすでは、ちょっとした段差も助けを必要とする。このドラマが作られた頃は、車いすの人が、映画館に入ったりバスや電車に乗るのさえ一人では難しい時代でした。常に誰かの助けを借りないといけない彼らは、卑屈になっていた。
 そんな時、同じ車いすに乗る少女(斉藤とも子)と文通(!)を通じて知り合った京本正樹は、電車に乗ったことがないという彼女を外に連れ出そうと彼女の家を訪ねる。
 車いすの友達の力も借り、近くの公園までみんなで行くことに。そして、踏切を渡ろうとした時、彼女の車いすの車輪が溝にハマってしまう。近づく電車。間一髪のところで近くの人に助けられる。。大の大人が6人もいても、車いすで足が不自由な彼らでは彼女一人を助けることができなかった。

 彼らの面倒を見続け、勤務後部屋さがし続ける清水健太郎は、その疲れから勤務中に居眠りをしてしまい、吉岡に指導される。事情を聞いた吉岡は、車いすの彼らと面談をし、彼らの話を聴く。それは、今まで知らない障害者の厳しい世界の話だった。


 ある日、吉岡の家に川島(斎藤洋介)がやってくる。先日の話し合いで吉岡が言おうとして言わなかった言葉が気になってきたということだった。そして吉岡はこういいます。


「君たちは、いろんな目にあっている。私たちは、それを想像するだけだからね。見当はずれだったり、甘かったりしてしまうかもしれない。君たちは、丈夫で歩き回れる尾島君と妹にとりついて、迷惑をかけてやろうとした。車椅子の人間が、どんな気持ちで生きているか、思い知らせてやろうとした。それをいいとは言えない。そんなふうに恨みをぶつければ、結局は自分が傷つく。しかし、だからといって、アタマから人に迷惑をかけるなと、聞いたふうな説教はできない。あの晩には、まだそれほど考えが熟さなかったが、いまの私はむしろ、君たちに、迷惑をかけることを恐れるな、と言いたいような気がしている。これは私にも意外な結論だ。人に迷惑をかけるな、というルールを、私は疑ったことがなかった。多くの親は、子供の、最低の望みとして「人にだけは迷惑をかけるな」と言う。のんだくれの怠けものが「俺はろくでもないことを一杯してきたが、人様にだけは迷惑をかけなかった」と自慢そうに言うのを聞いたことがある。人に迷惑をかけない、というのは、今の社会で一番、疑われていないルールかしれない。しかし、それが君たちを縛っている。一歩外に出れば、電車に乗るのも、少ない石段を上るのも、誰かの世話にならなければならない。迷惑をかけまい、とすれば、外に出ることが出来なくなる。だったら、迷惑をかけてもいいんじゃないか? もちろん、いやがらせの迷惑はいかん。しかし、ぎりぎりの迷惑は、かけてもいいんじゃないか。かけなければ、いけないんじゃないか。君たちは、普通の人が守っているルールは、自分たちも守るというかもしれない。しかし、私はそうじゃないと思う。君たちが、街へ出て、電車に乗ったり、階段を上がったり、映画館へ入ったり、そんなことを自由に出来ないルールは、おかしいんだ。いちいち、うしろめたい気持ちになったりするのはおかしい。私は、むしろ堂々と、胸をはって、迷惑をかける決心をすべきだと思った。」
それまでうなずいて聞いていた川島はそこではじめて口を開く
「そんな事が通用するでしょうか」と。
そして吉岡は続ける。
「通用させるのさ。君たちは、特殊な条件を背負っているんだ。差別するな、と怒るかもしれないが、足が不自由だということは、特別なことだ。特別な人生だ。歩き回れる人間のルールを、同じように守ろうとするのは、おかしい、守ろうとするから歪むんだ」


この後、川島が昔、親にトルコ(今で言うソープランド)に行きたいといった話をする。これがまた感動的なんですが、多感な時期にこのドラマを見て、いろんな事を考えました。


 観た事のない方、機会があれば是非観てください。感涙の、そして自分はどう生きるかを考えさせられる名作です。

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