2001年・高橋伴明監督
何度か観ています。何となく観たくなって観ましたが、日曜の午後にみる映画じゃありません。案の定、ドローン、じゃないどよーーーんとなって精気持っていかれました。
「光の雨」は、立松和平原作小説の映画化ですが、原作「光の雨」は劇中劇という演出で、この映画の内容を描きつつ、映画を撮影するスタッフ俳優たちを描くという2重構造になっています。
原作は、有名なあさま山荘事件の前日譚である革命左派による「印旛沼事件」で2名を殺害遺棄、その後連合赤軍による「山岳ベース事件」という12名の同志を総括、粛清の名のもとに虐殺した事件を主犯の一人坂口をモデルとした玉井という老人が語る物語。
連合赤軍についての映画は2008年、若松孝二監督の「連合赤軍・あさま山荘への道程」、「光の雨」の翌年に警察側から描いた「突入せよ!あさま山荘事件」、それと事件そのものではありませんが、これをモチーフとしたスプラッタ映画「鬼畜大宴会」(1997年)が作られています。
連合赤軍事件は、生まれていたとはいえ、6、7歳位ですからリアルな記憶としては、延々TV中継された浅間山荘立てこもり銃撃戦位しかありません。その後発覚したこれらの事件については後追いで調べて戦慄したものです。
何人もの仲間を殺したこの事件は、決して許されるものではない。でも極限に追い込まれた時、自分ならどうするか、そういう”踏み絵”のようなものを目の前に出されているような気がしてならなくて、つい調べて観たくなって沢山の本を読み映画を観ました。
今の安穏とした生活視点から「これは悪いこと」「莫迦な奴ら」と断罪することは簡単です。でも実際にあの場にいたら自分はどう行動していただろう。
映画「光の雨」のメタフィクション的な描き方は、初めてみた時、こういう描き方は正面からこの事件に向かっていない、と自分的には否定的でした。だから史実に出来る限り忠実に描いた(とされる)08年の「連合赤軍・あさま山荘への道程」の方に共感しました。しかしながら、改めて「光の雨」を観てみると現代の若者が連合赤軍のメンバーを演じる中での苦悩を映画の中で描くやり方で現代とのシンクロを試みているという点でやっぱり”あり”だと感じるようになりました。
それに余りにも凄惨な総括のシーンは、目をふさぎたくなるほど酸鼻を極めますが、これがあくまでも"劇中劇"であるという扱いにする事で、それが幾分和らぎます。実際にあったことだからといってそのままぶつけられる「連合赤軍・あさま山荘への道程」は傑作ではあるけど、観客の精神は「光の雨」以上に強いものを求められます。そういう意味で、「光の雨」は連合赤軍ものの入門としては決して悪くないと思うのです。もっとも、立松和平の原作は2030年に死刑制度が廃止になって仮釈放となった老人、坂口(作中では玉井)の回想という形で物語が進められる変な近未来小説になっているんで、いまいち乗り切れませんでしたが。
時代の狂気と一言では片付けられない連合赤軍事件。日本史の授業で端折られてしまう昭和史ですが、少なくともその時代に生を受けた者としては一般常識レベルで知っておく必要がやっぱりあるような気がしてならないのです。
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