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「産霊山秘録」

産霊山秘録 (集英社文庫)
 半村 良著 集英社文庫・2005刊
 
 "むすびのやまひろく"と読みます。
 最初に読んだのは18歳くらいの時。角川文庫でした。以来、出版社を変えて度々再刊されていて、そのたび購入して読んでしまいます。中身は変わってないのに。
 1973年のハードカバー版は古本屋で入手しましたから「産霊山秘録」については全ての出版社刊行分を持っています。半村良の小説は好きですがその中でも特に好きな物語です。

 
 遥か古代より続く<ヒ>一族。
 かつては天皇より上の位であったとも言われる異能集団。御鏡・依玉・伊吹という"三種の神器"を使うことでSF的にいう"瞬間移動"をする事が出来る。
 物語は室町末期、久しぶりに勅忍宣下を受けた事より始まります。戦国時代の幕開け、織田信長に天下を取らせようと暗躍する<ヒ>の長、瑞風。同じくヒでありながら、表に出て信長を補佐する明智光秀。<ヒ>の力を借りている事を知らず上洛を目指す信長の野望は、<ヒ>の助力を影で得ながらも<ヒ>の育成地比叡山延暦寺を焼き討ちし、結果的には世界の王となるべく天皇すら否定それに気が付いた光秀が本能寺で主君信長を襲う。
 
 その後、関ヶ原の戦いと江戸の安定の為に天海と名を変えた瑞風、江戸になって義賊といわれる鼠小僧の正体、幕末の坂本竜馬新撰組の<ヒ>の末裔同志による死闘、そして東京大空襲から始まる戦中戦後篇、そして現代と、400年に渡る<ヒ>一族の物語が紡がれていきます。

 人々の願いを叶える"産霊山"の芯の山はどこにあるのか。延暦寺焼き討ちの時、空ワタリ(行き先を具体的に想起しないで瞬間移動すること)した飛稚(とびわか)の行く先は。産霊の技を究めた猿飛が、芯の山の一つとされる日光で試した実験の結果は。


 人に知られる正史には行間があって、過去の文献によって判ることもあるけど、ほとんどの場合想像するしかない。半村良の伝奇SFものは、想像の横糸を正史の縦糸と組み合わせていく物語ですごく面白い。


 「産霊山秘録」は、500ページ以上の厚めの本ですがそれでも江戸篇、幕末篇の駆け足感は否めず、明治大正期はすっぽりと抜けていて残念。同じ半村良作品の「戦国自衛隊」が他の人に書き継がれているように、「産霊山秘録」も誰か書いてくれないかな。隙間を埋めるだけで結構いろいろな物語がありそうな気がします。


 「産霊山秘録」お勧めです。半村良ものでは同系の作品として「嘘部シリーズ(闇の中の系図他)」「石の血脈」それぞれ個別の作品ですが「〜伝説」と伝説の付く物語。何を読んでも面白いです。

 

産霊山秘録 (集英社文庫)

産霊山秘録 (集英社文庫)