万城目学最新刊。といっても共著で2012年に文芸春秋から発売された同名単行本に2篇追加増補して文庫化されたものですが。
明治中期から昭和初期までの近代建築、結構好きです。西洋建築文化が一気に流入してきて、お金持ちや華族の建物、企業の建物に西洋風の建築がどんどん出来始める。西洋風でありながら日本人の細やかな装飾が施されたりして、観ていてワクワクする。古い建物がどんどん改築される中、最近は保存をしようという考えも出てきて、見学ができるところもある。そんな建物を 万城目学と門井慶喜があーだこーだ言いながら訪ね歩く内容。
紹介されているのは、大阪、神戸、横浜、東京、そして台湾にある近代建築。特に東京駅を設計したので有名な辰野金吾の建物みたいな有名建築家のものだけでなく沢山の魅力的な建物があってすごく興味深い。岩崎弥太郎の孫、岩崎久弥によってジョサイア・コンドルの設計で建てられた岩崎邸(文京区)、駒場公園にある前田侯爵邸は行った事がありますが、本当にその時代にタイムスリップしてしまうような贅を尽くしたいい建物。
紹介はされていないけど、自分的には猪苗代湖畔に立つ旧有栖川宮・高松宮翁島別邸だった鏡天閣、先日行った熱海の起雲閣。本当にいい建物です。
確かに今となっては単板ガラスで気密性もなく、機能から行ったらすこぶる使いにくい建物、しかも立地が良いので立て直してインテリジェントビルにする方が快適で効率は良いのですが、出来れば安易に建て替えをしてしまわずに上手に残していく方法を考えて欲しいなぁと思います。でもやっぱり建物を残すのは難しい。壊されて無くなってしまう前にそういう建物に触れたいなぁと思います。
建物好きでなくても、この本を読むと俄然興味がわいてくる一冊です。
お勧め!
- 作者: 万城目学,門井慶喜
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2015/05/08
- メディア: 文庫
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