梁石日著・幻冬舎アウトロー文庫
薄い本なので往復の電車で読めた。
梁石日は、一時良く読んでいた作家さん。映画化された「月はどっちに出ている」の原作「タクシー狂躁曲」や「血と骨」、それ以外にも在日韓国人としてのアイデンティティをベースに数多くの著作があります。この本は1992年初刊ですから、もう20年以上前。文庫化も1999年ですから16年も前。小説ではなく、男女の性、性欲についての梁石日の考えが描かれたエッセイ以上論文未満といった感じ。
在日2世として、儒教的精神というか政治の道具として使われ一般庶民に浸透した、徹底した男尊女卑の世界を目の当たりにしている本人だからこそ、自分の血を呪いフェミニストを気取っているけど自分の中にある男尊女卑的な考えがあることを認めざるを得ない。そんな二律背反な状況が読んでて面白かったです。
さてここで私の立脚点として。
うちのカミさんの名言なんですが、
「世界中の全女性が50年間子どもを作ることを拒否すると人類は滅びる。だから男は女を敵に回してはいけない」
と。実は人類にとって女性の連帯は核兵器よりも怖いんです。
確かにその通りで、実はその状況ってもう始まっているのかもしれません。ここのところの出生率の低下は、間違いなく女性を大切にしない男の責任だと思うのです。
昔は、女性には学問はいらないとか言って満足に学校にも行かせず、親の手伝いをさせて、結婚適齢期になれば勝手に相手を見つけてきて結婚させてしまう。相手の家に入ったら嫁としてこき使われ、跡取りを産むことが至上命題。生れたら生まれたで乳飲み子を抱えながら「出産は病気じゃない」とか言われて家事をさせられる。ずっと家で働かされてあっという間に歳をとる。
それは男が作った社会が一番よくまわるシステムだった。ところが、女性の人権が声高に叫ばれ、選挙権が付与されて、家電の発達は女性を家事から解放、80年代には雇用機会均等法なんていう法律まで出来て、社会に出る準備は完全に整った。
でも社会の仕組みは、いまだに男社会のまま。出産をすれば産休せざるを得ず第一線でバリバリやってたキャリアウーマンも戦線離脱を余儀なくされる。同期入社の男と比べても出世のスピードはやっぱり遅れる。いくら一緒に育てるといっても男女均等に家の仕事を分ける事も出来ない。
私は、そもそも男の作った社会(枠組み)の中で、男女が同じ仕事をするというのが間違っていると思っています。差別する意味じゃなく、男性は男性に合った仕事やそのリズム、女性は女性にあった仕事やそのリズムがあると思うのです。それを考えず、単に男女が机を並べることに無理があると思います。
雇用機会均等法というのも、あくまでも女性が男に交じって仕事をしたいと思う時にそれを妨げないということで、女性が男性と同じ仕事をするってことじゃないと思います。
出産や育児や家事ってすごい仕事だと思う。それを一生懸命やることも素晴らしい生き方だし、社会にでて自分の能力を試したいというのも立派。そういう意味では、男性は「出産ができない」という生まれながらにして出来ない仕事がある。
女性登用の名目で能力があるとは思えない人が管理職になってたりするのも問題。「女性管理職を○○%にする」とかいう目標もなんつーか本末転倒というか…。女性だから管理職にするとか言ってる時点で逆差別だということに何故気が付かないんだろう。
女性は子どもを産む器官をもっていで男性はもっていない。これは厳然とした事実。まずはそれを中心に社会の仕組みを考え、女性の仕事について考えていかないと、いつまでたっても女性の本来的な社会進出なんてできないし、出生率なんて上がらない。
大体男性は女性に勝てるわけないのです。だから女性を家に閉じ込めてきたんです。でももうそういうわけにいかなくなった。
これから男はどんどんいる場所がなくなっていきます。願わくば、女性には莫迦な男性の成長を助けていって欲しいものです。。
- 作者: 梁石日
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 1999/07/01
- メディア: 文庫
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