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「再生の島」


再生の島 (文春文庫)
奥野修司著・文春文庫
沖縄・久高島は、かつて海の彼方の異界ニライカナイにつながる聖地で、世界遺産にもなった沖縄本島最高の聖地、斎場御嶽は、この久高島に巡礼する国王が立ち寄った御嶽で、久高島からの霊力を最も集める場所と考えられてたそう。
 そんな聖なる地に「久島留学センター」という子どもたちの共同生活施設があって、その設立初期をルポした作品がこの「再生の島」です。

 奥野作品を読むのは、『ねじれた絆―赤ちゃん取り違え事件の十七年』『心にナイフをしのばせて』に引き続き3冊目。いずれも興味深いテーマで数年の年月をかけた丁寧な取材のノンフィクションです。
 この「再生の島」は、2012年初刊時は「不登校児 再生の島」というタイトルでした。内容を的確に表したタイトルだと思いますが、このタイトルが、舞台となる「久高島留学センター」のその後を変えてしまうことになってしまったことが巻末の文庫あとがきに書かれます。
 
 山村留学という活動があることをこの本ではじめて知りました。「久高島留学センター」は、その山村留学を行なっている施設です。一般的には、地域の学校に通うのが普通ですが、そういう学校生活になじめない何らかの理由がある子どもたちが親元を離れて短期、長期で農漁村で暮らしながら学校に通うプログラムです。
 必然的に不登校児が集まることになるのですが、不登校になる原因は様々。「久高島留学センター」では、スタッフ、学校、地域の人たちが温かく、時には厳しく接することで、そういった問題が解決されていきます。

 コンビニもゲームも携帯もテレビすらない「久高島留学センター」での生活が子どもたちをどう変えていくのか。興味深く読んでいくと、一つの結論に達します。問題児は本人や社会の問題で問題児になるのではなく、そのほとんどの原因は親にあるということ。問題児の親はすべからく問題を抱える親にあります。
 「子は親の鏡」と、昔からいわれます。親として子どもにどう接するか、それはすごく難しい問題です。しかし子どもが小さい頃、お手本となる大人は親しかいません。答えは一つじゃないけど、私は、親としてしっかりと人生を歩む姿を見せることに尽きるのではないかと思うのです。
 
 様々な問題を抱えた子どもたちが「久高島留学センター」での生活で見違えるように生き生きとした姿に変貌するのは、感動的ですらあります。本当に子どもの成長を助け、見守る大人のあるべき姿を教えられたような気がします。


 残念ながらこの本に描かれた「久高島留学センター」は、当時のスタッフがいなくなり、地域との関係性も変わってしまっているということ。それでも問題を抱え苦しんでいる子どもたちが今もいるのは事実です。そういった子どもたちを立ち直らせる環境を整える事が、今の大人がすべきことなんだよなぁと思いました。


 大人の人、特に子を持つ大人にお勧めです。

 

再生の島 (文春文庫)

再生の島 (文春文庫)