佐々淳行 著・文春文庫
2010年初刊・2013文庫化
日本の名だたる大事件に警察官僚として現場を指揮し続けた佐々さんの自伝のひとつ。この本は70年代のハイジャック事件を中心にその対応について語っています。最近はあまりハイジャック有りませんが、言われてみれば昔はよくありました。今でこそ「人命は地球より重い」という決断はまずかったのではないかと言われますが、そもそもハイジャックを取り締まる法律もこれを制圧する特殊部隊もなかった当時の日本で更に多くの人質になった人の家族の事を考えれば、致し方なかったかも。そんな何もない状況の中での現場の裏側が興味深いです。
昨今の近隣諸国の強硬な姿勢や安保法制について佐々さんはどう思っているのか。日本国の進むべき道は佐々さんの内に有るといってよい。
官僚というと、デスクワーク中心でしかも省益中心、出世レースで自分が事務次官になる為の足の引っ張り合いに汲々としているという印象が強いけど、佐々さんは東大法学部卒でありながら常に現場で指揮し続けた姿勢はちょっと異質。
佐々さんは警察官僚として警察官を思う気持ちがすごく強い。ノンキャリアの一兵卒もこういう指揮官の元にいたら気持ちよく命令に従ってしまうと思います。それは佐々さんが常に現場にい続け、俯瞰して事件を大局から判断し、更に上司の命令も聞くという調整能力と判断力に長けていたからにほかなりません。
一方で正しくない事は正しくないと、総理大臣にすら諌言してしまうところが、佐々さんらしい。官僚の出世レースなんて言葉は佐々さんの人生にない。そういった潔さ、温かさ、激しさに佐々さんの著作に触れるたび思います。恐らく私の精神形成に結構影響を与えてくれています。
佐々さんは昭和5年生まれ。私の父が昭和4年生まれでしたから、私のもう一人の父親と思って著作に触れています。
80歳を超えて、最近は随分弱ってきましたが、まだまだ佐々さんの経験が生かされる場面が多くあります。お身体に気をつけて、これからも経験に裏打ちされたお話を聞かせて欲しいです。
日本赤軍とのわが「七年戦争」―ザ・ハイジャック (文春文庫)
- 作者: 佐々淳行
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2013/03/08
- メディア: 文庫
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