室積光著・小学館文庫
著者の室積光さんは、「3年B組金八先生」の体育教師、伊東先生。その後恐らく代表作で、マンガ化TVのスペシャルドラマ化されている「都立水商!」で小説化としてデビュー。以来毎回面白く読ませて頂いています。
というわけで久しぶりに手に取った室積作品「史上最強の内閣」。初刊は2010年ですから、話題としては少し古く、北朝鮮の核開発、ミサイル発射がお話の中心。
体たらくな2世3世で構成された内閣が、数々の問題に対応できなくなり、政権を"影の内閣"に譲ることに。"影の内閣"というのは、経歴不明の政治のプロ集団、国家存亡の危機に初めて表に出るいわば一軍。という事は、通常表面に出ているのは、二軍、三軍のおぼっちゃまチーム。
北朝鮮との外交問題解決の為に突如出てきた一軍の内閣の各大臣が、快刀、乱麻を断つかのごとく一挙解決します。もっとも、ご都合主義的な感もないわけではありませんが、政治小説風エンタ−ティメントですから、そこはあまり目くじらを立てない方がよろしい。
ラスト近く。戦争になる事はないのか?という問いに対して、高杉総務大臣がこんなことを言います。
「大丈夫、この国には『サザエさん』がいる」
??そしてこう続けます。
「『サザエさん』は終戦の翌年、昭和21年から新聞連載が始まった。サザエさんの家族知ってるよね。家族の中で男は、波平さん、マスオさん、カツオくん、タラちゃん。サザエさんの家には、父親と旦那さんと弟と子どもがいる。これはあの戦争で日本の多くの女性が失ったものなんだ」
!!
「サザエさんは、当時の日本女性が失った全ての者に囲まれている幸せな人。人々には彼女の幸せが眩しかったに違いない。そして現在もサザエさん一家は愛され続けている。一部の人は今にも軍国主義国家に逆戻りするような寝言を、海外にまで広めようとしている。でも憲法9条がなくても、サザエさんが日本人に親しまれている限りこの国は戦争を選ばない。『サザエさんの幸福』を日本人が手放すはずはない。そう信じている。それほど深く反戦の思いは日本人の心に刻まれている。理屈じゃない。」
今まさに安保法制で、声高に軍国主義化だとか戦争を始めようとしているだとか徴兵制復活だとか、根も葉もないことを声高に叫んでいる国会周辺でアジってる奴らに読ませたい。
そんな暇があったら日曜6時半に「サザエさん」をみてほんわかした気持ちになった方が良い。
軽い本ですが、想いは確かな物語です。
続編(史上最強の大臣)もあるようですが、このシャドウキャビネットに今の政権をホントに任せたいと思いますわ。さらなる続編を希望します。
- 作者: 室積光
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2013/03/06
- メディア: 文庫
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