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「「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気」

「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気
牧村 康正,山田 哲久著・講談社

 実家に日帰り帰省の電車の往復で一気に読んじゃいました。
 ヤマトにどっぷりはまった私たち世代は、「西崎義展」と聞くと愛憎織り交ぜた複雑な思いになります。この作品は、あの宇宙戦艦ヤマトを世に送り出した西崎義展の裏面を掘り下げたノンフィクション。全く知らない人は、手に取らないニッチな読者向けの本と言えます。
 
 ショービジネスといえば聞こえいいけど、要は興行と呼ばれる世界で、一獲千金を狙ってた山師だということは、「さらば宇宙戦艦ヤマト」で壮絶な最期を遂げ何十万人のヤマトファンを悲嘆の渦に巻き込んだ後、何事もなかったかのようにTV版で肝心のラストを改変、その後続々とご都合主義満載の続編を作り続け、ファンの心情を裏切り、感動の作品を完膚なきまでに叩き壊したことで、アニメファンから総スカンを食らったことでも明らか。
 それでも懲りずに「YAMATO2520」とか「―復活編」とかを作り続けちゃうあたり、厚顔無恥以外の何物でもない。もっとも、それでも今度こそ1stヤマトに比肩する作品ができるかと期待してしまうヤマトファンは少なからずいて、私もそんな愚かなファンの一人だったりします。

 それにしても舞台裏での西崎義展の奔放なことといったら、話に聞く以上にすごかったというのがこの本を読んでの感想。
 借りた金は返さない、愛人を侍らかせ、ちょっとお金がはいるとクルーザーを買う。会社を作っては倒産を繰り返し、口八丁手八丁、時には札びらで引っぱたいて才能を集め、自分の作品を作り上げるそのパワーは表題にある"狂気"以外の何物でもない。人間としては完全に破たんしています。

 しかし、それでも「宇宙戦艦ヤマト」(第1作)は、やはり傑作だと思うのです。当時のアニメ、SF、音楽、演出の世界のたくさんのクリエイターを集め、当時考えられなかったセンス・オブ・ワンダーを実現したことは間違いなく、ヤマトの洗礼を受け触発された人々が今も第一線で活躍していることがそれを証明しています。
 もちろん、その発想の原点は西崎義展にあり、極論を行ってしまえば、松本零士をはじめ集まったクリエイターはその肉付けを行ったに過ぎない。「宇宙戦艦ヤマト」は、西崎義展という山師の純粋な部分をさらに結晶化させた上澄み部分であり、その後の作品は、すでに結晶化を終えた濃度の薄い溶液、澱のようなものしかないのだから、最初の作品のような輝きがないのは当然なのです。


 ヤマトファンの人、見たくないかもしれないけど、こういう裏側を知るのはやっぱり作品を知るうえで大切なことだと思います。
 一部の人に強くおすすめ。

 

「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気

「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気