百田尚樹著・幻冬舎文庫
人はもって生まれた自分の顔と一生付き合っていかないといけない。もう少し目が大きければ…、もう少し鼻が高かったら…。多少の造作の悪さはみんな1個や2個、いやそれ以上持ってる。私なんか、生まれてこの方、自分の顔はほんととにかく嫌い。なんで福山雅治や向井理や玉木宏みたいな顔に生まれなかったんだろうと、その時代々々でかっこいい今風な男子を見るといつも思ってたもんです。
でもま、不可抗力ならともかく、基本自分の体にメスを入れるのは否定派なので、整形まではさすがに考えませんでしたが、でもやっぱ、町を歩くとみんなが振り向くくらいかっこよくなりたかったなぁと思います。
この物語の主人公は普通の不細工を通り越して異相といってもよいくらいの醜女。そのために、同級生や家族からも否定され続ける。高校時代、事件を起こし親から手切れ金替わりに金を出して東京の短大に行くけど、そこでも周りから否定され続ける。就職もままならならず、印刷所の女工になるけど、またそこでも、ひどいいじめに会い続ける。ある日、二重瞼にする手術を受けたのをきっかけに美容整形にはまりだす。整形を続けるためには、まっとうな仕事だけではお金が足りず、ファッションヘルスやソープランドにいくけど、あまりもの醜さに風俗ですら断られ続ける。ついに、SMクラブでのM嬢から始まり、お金がたまるごとに整形を続け、ついには全くの別人、絶世の美女になる。見かけがどんどん良くなるにつけて、男がどんどよって来る。自信もつき、お金も稼げる。今までの人生を取り戻すかのように、整形によって磨きをかけ続ける。その理由は、これまで馬鹿にしてきた人々を見返すことと、初恋の彼に振り向いてもらうこと…。
「ひとは見かけじゃなくて心だ」とか「顔の美醜なんて皮1枚のこと」なんて言いますけど、わたしは違うと思います。美しいかどうかではなく、誰にでも間違いなく好みの顔というのはあって、それは顔のひとつの部品だったり、曖昧だけど雰囲気だったり。どこにも好みの部分がなかったら、やっぱり好きになったりしないと思うのです。もちろん、そこにはその人が生きてきた年輪というか、"皺"が刻まれていて、それは、その人の精神を表しているとも思うのですが、それでも顔なんてあればいい、ってもんでもないと思います。だから、必要以上に顔形を否定するのはやっぱり間違いだと。
それでもどうしても自分の顔が気に入らず、性格にゆがみを生じてしまうくらいなら、整形して人生をリセットするというのも選択肢としてありなのかもしれません。主人公の女性は、それくらい思い詰めていた。
面接に行ったヘルスの店長、崎村。まだ最初の整形しかしていないひどい顔の主人公に優しい言葉をかけて以来、時折あって力を貸してくれるやくざもの。どんどんきれいになっていく主人公に以前と変わらない付き合いをしてくれる崎村と結ばれることが主人公にとって一番しあわせだったかもしれない。
約500ページありますが、一気に読めました。自分は醜いと一度でも思ったことがある人にはお勧めです。
蛇足ですが、2013年に高岡早紀主演で映画化されてますが、権利関係でもめていて、いまだソフト化されていません。観てみたいなぁ。
- 作者: 百田尚樹
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2012/04/12
- メディア: 文庫
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