三軒茶屋の裏路地にあるビアバー「香菜里屋」。マスターの工藤は、静かで優しい笑顔でお客さんを迎える。お客さんが持ち込んでくる問題をカウンター越しに聞きながら、一緒に問題を解き明かしていく連作短編。既に北森鴻は鬼籍に入り、続編は今作を含めて4冊。残念です。
今回の6話、どれも悲しい過去を解き明かしていくので、清々しい後味ってわけでもないのですが、人生の重みというか、深みを改めて感じさせる余韻があります。こういう物語って、おそらくまだまだ未来に目の向いている若い時に読んでもよくわからなかったかもしれません。
人は生きているといろんなことがあります。人に言えないことのひとつやふたつ誰でも持っている。それを解き明かすことは決していい趣味ではありませんが、それでもその人の事をより深く知りたいと思う事は単なる好奇心ではなくて「それを知っても嫌いにならない」と決めた時と、自分は思っています。だから逆に深く知る必要のない人もいるわけで…、それはまた別のお話。
度数の違う4種類のビールと、マスターの創作料理。こういうバーが行きつけにあるとよいなぁ。
さ、続編(第2作「桜宵」)を読もっと。
- 作者: 北森鴻,郷原宏
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/12/14
- メディア: 文庫
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