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「市川崑と『犬神家の一族』」

市川崑と『犬神家の一族』 (新潮新書)
春日太一著・新潮新書

 殺人ミステリーの苦手な私ですが、市川崑監督の「犬神家の一族」(1976)は、本当に傑作だと思います。大好きで、何度観たかわかりません。連続する殺人はおどろおどろしくて目をそむけたくなるシーンの連続ですが、根幹にあるのが愛の物語であるという点がもっとも惹かれるところではないかと。更に大野雄二の音楽と市川崑監督のカット割、名優たちの演技など、見る度に新しい発見があります。

 この本は、市川崑監督の演出について生い立ち、過去の作品などを通して解題し、更に25000字に及ぶ石坂浩二のインタビューと合わせて、「犬神家の一族」に迫ります。
 遺作となった2006年版は、ほぼ同じ脚本、コンテで作られており、どうしても76年版と比較されてしまいます。勿論私も76年版絶賛派ですが、06年版のラストシーンは嫌いじゃありません。
 市川崑監督はいくつかの横溝映画を撮っていますが、本当にこの作品がラストなんだよなぁと思わせるラストで、この改変は石坂の提案だったとのことですが、市川崑監督の映画に対する心情もまたこの時の金田一耕助と同じなんじゃないかと、私は思います。

 ドロドロした横溝ミステリーですが、徹底してクールに描く市川演出は、同じ金田一耕助ものでも野村芳太郎監督の「八ッ墓村」とはまったく異なります(市川監督も96年に「八ッ墓村」撮ってます)。同じ原作でも時代や監督によって異なるのは当然ですが、市川崑監督の感情移入を許さない演出こそ横溝作品の演出としてはありなんじゃないかと思います。
 しかしながら、突き放したような作劇をしつつもそこに惹かれるのは、根本的に市川監督が優しく真面目な人で、金田一耕助を通じて物語の本質を観客に届けようとしているからなんじゃないかと思うのです。

 
 意識して追いかけたことはありませんが、市川崑監督の他の作品を観てみたくなりました。


 

市川崑と『犬神家の一族』 (新潮新書)

市川崑と『犬神家の一族』 (新潮新書)