昨年末読み終えた本の感想です。
昨年読んだ本は48冊。原則として通勤時間しか読書しなくて、昨年は、昇段審査を受ける為に学科の勉強をしていたりしたもので、弓道関係の本を読む時間に取られて、読んだ本の数が結構少なかった。もっとも横浜勤務になってから、電車に乗ってる時間が細切れになったというのも少ない理由。あとは、目が悪くなったってことですかね。電車で本を読む時は眼鏡をはずさないと読めません。複合的な理由で50冊に満たなかった。来年はも少し読みたいなぁ。
さて「僕はただ青空の下で人生の話をしたいだけ」。本屋に行った時、タイトルが気に入って衝動買いしました。この作者さんの本は一度も読んだことなく、あとがき、解説すら読まずに買ったのはずいぶん久しぶり。結論から言えば、すごく今の自分の感性にあったステキなお話しでした。
連作短編の「DAYS」は、主人公の売れない作家、竜二のいろいろな人との触れ合いの中での一コマを淡々と描く。このお話に悪い人が出てこない。作者さんが投影されたような竜二は、まわりの人たちに温かく迎えられている。それはとりもなおさず、作者さんが”優しい人”だからに違いありません。
最終話の「君の幸福は僕の幸福」は、ちょっとSFチックな話。頑張るのが嫌いな主人公三郎は、他の人の幸せを感じる能力を身に付ける。街を歩くと、”寝てみたいタレントNo1”がロケをしていて、まわりにはたくさんのファンとおぼしき女性ファンが十重二十重に取り囲んでいる。そのタレントとシンクロしたものの、全然幸せを感じていない。高級車に乗り、高そうなスーツを着た中年に派手なコートを着たスタイルの良い髪の長い娘が甘えるように絡みついている2人組。絵に描いたような幸せ。でもこの2人からも全然幸せを感じていない。みんな人が羨むような生活をしているのに何で幸せじゃないんだろう。そんなことを考えながら歩いていると老婆が三郎の前で転んでしまった。手に大事そうに持っていた風呂敷包みから転げ落ちたのは、無数に見えるほどたくさんのおにぎり、卵やき、たくあん。あぁと呻くように倒れ込んだ老婆を避けるように先を急ぐOLやサラリーマンたち。三郎は老婆に駆け寄り事情を聴くと、ホームレスの人に食べさせてあげているとのこと。作り直してくるという老婆に少ししか汚れてないから大丈夫だよと、重箱に詰め治す三郎は老婆と一緒にホームレスのもとに行く。ホームレスはそれを喜んで食べる。お礼といってホームレスはお婆ちゃんに拾ってきたラジカセをプレゼントする。目が見えないお婆ちゃんのために、スイッチに小石をテープでつけて、「石1個がテープ再生、石2個が巻き戻し、石3個が早送り、石4個がラジオのスイッチ」と丁寧に使い方を教えてあげる。ホームレスの一人は「婆ちゃん民謡好きだから今度民謡のテープいっぱい拾ってくるね」という。すると三郎は、お婆ちゃんの中に小さな花が開いていくのを感じた。
と、こんな話。
幸せっていうのは、人と比べたり羨ましがられたりするもんじゃなくて、自分が感じるもの。「俺って幸せだろ」って自慢するものでもない。「あぁ今私は幸せだ」と感じることが幸せだし、それは他人にはわからないもの。そういう小さな幸せを感じることが大切なんだと思う。
さらに言えば、他の人に幸せを与えられる人が幸せになる権利を持っているんだとも思う。
そういう人に私もなりたいなぁ。
- 作者: 辻内智貴
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