新海誠著・角川文庫
著者による同盟監督作品の小説。2年前にハードカバーで出ておりその時も読んでいますが、今回文庫化ということで改めて購入。
アニメ作品版は、孝雄と雪野を中心に描かれますが、小説版は、アニメでは台詞は一言二言しかないキャラクター、孝雄の母親や兄の翔太、雪野の同僚で元恋人の体育教師、伊藤、雪野を退職に追いやった相沢祥子にそれぞれ一章割いてスポットを当てており、アニメではわからなかった雪野や孝雄の思いがより深く理解できる。
今回気が付いたのは、孝雄の母親と年下の恋人清水さん。母親と清水さんの年齢差は、孝雄と雪野と同じ12歳だということ。年齢差があっても恋愛関係が十分紡げることを暗喩しているんですね。
それ以外にも、兄、翔太と同棲する梨花さん、雪野と伊藤、雪野が先生を辞める直接的な原因となった祥子と牧野先輩、いろいろな恋愛の形が描かれていて、孝雄と雪野の関係との対比が面白い。こうした映像の裏面で起きていていた様々な事柄を知ることは、よりその世界を理解するために役立ちます。
なにより全10章のそれぞれに物語に即した万葉集の歌が章末に載っており、タイトルの“言の葉の庭”が広がりをもっています。
映画が孝雄と雪野の出会いと別れを中心に描いているのに対し、小説版はさらに奥行きを増しています。どちらが表現方法として優れているというものではなくて、相互に補完されるものとなっています。
映画が気に入った人は、小説版を、小説版で初めてこの作品に触れた人は映画を観てほしいです。

- 作者: 新海誠
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/メディアファクトリー
- 発売日: 2016/02/25
- メディア: 文庫
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