帰りにBOOKOFFに寄ったら発見した「3.11を忘れないために ヒーローズ・カムバック」。東日本大震災復興のためのチャリティー企画。細野不二彦の声掛けで集まった9人の漫画家さんたちによる競作で、必要最低限の経費を除く収益と印税を寄付されたそう。2013年9月末で収益金は4000万の寄付を行ったということでした。(http://comic-soon.shogakukan.co.jp/blog/news/1292/)
『ヒーローズ・カムバック』収録作品一覧は以下の9編。
・細野不二彦『ギャラリーフェイク』(「週刊ビッグコミックスピリッツ」2012年47号、48号
・ゆうきまさみ『究極超人あ〜る』(「週刊ビッグコミックスピリッツ」2012年49号
・吉田戦車『伝染るんです。外伝 サラマンダー』(「週刊ビッグコミックスピリッツ」2012年50号
・島本和彦(原作:石ノ森章太郎 協力:石森プロ)『サイボーグ009』(「ゲッサン」2012年12月号
・藤田和日郎『うしおととら』(「週刊少年サンデー」2013年4・5合併号、6号』
・高橋留美子『犬夜叉』(「週刊少年サンデー」2013年10号
・荒川弘『銀の匙 Silver Spoon』(「週刊少年サンデー」2013年11号、12号
・椎名高志『GS美神 極楽大作戦!!』(「週刊少年サンデー」2013年13号、14号
・かわぐちかいじ『俺しかいない〜黒い波を乗り越えて〜』(「ビッグコミック」2012年6号
この中で、読みたかったのが島本和彦の「サイボーグ009」。天使編の続きを島本和彦が描いたということは知っていたんだけど、雑誌はすでに売り切れ。この本に再録されていることを知ってから欲しかったんですが、店頭ではあまり見かけず今になってしまった。
「サイボーグ009/天使編」の初出は、1969年の雑誌「冒険王」。私は中学生の時、サンデーコミックスで初めて読んで衝撃を受けました。
これまでブラックゴーストをはじめ諸々の悪と戦い続けたサイボーグたちの前に、有翼人が現われる。本能的に危険を感じた009は加速装置のスイッチを入れるけど利かない。一緒にいた007は有翼人につれて行かれてしまう。残りのサイボーグたちが集まり、007の探索を始めると2人の有翼人がサイボーグたちの前に現われる。
「天使…!!」
「オマエタチは何者カ?」天使は超然と009たちに問いかける。
「僕らは…人間だ」 009は彼らに向かって答える。
「ソレハワカッテイル。ダガ身体ノ中ニメカニズムヲ埋メコンデ機能を高メテイル、ナルホド改造人間(サイボーグ)カ。」
天使には、身体の中も、思考も分かるという。
009は有翼人たちに問う。
「あんたたちが敵か、味方か。そして本当に神なのか!」
それに対して有翼人たちはこう答える。
「オマエタチノイウ神ガドンナモノカシラナイガ、オマエタチノ造物主トイウ意味デナラソノ通リダ!」
天使たちは続けて
「オマエタチヲツクッタノハワレワレナノダ!シカシ"収穫"ニキテミテガッカリシタ。アマリニモデキガワルイ」と。
「ダカラハジメカラヤリナオスコトニシタノダ。」と続ける天使たち。
「イマコノ星ノオモナ場所デソノホウホウヲ研究中ナノダ、ユエニ実験ノジャマヲサレテハ迷惑ナノダ。ワレワレニサカラウコトハヤメヨ。ヨイカ警告ヲシテオクゾ。コレ以上邪魔ヲスルノナラ次ハ容赦シナイ」
天使の言葉にサイボーグたちは戸惑う。神と戦っても勝てる見込みはほぼゼロ。しかし009たちは、神といっても自分たちよりも少し早く生まれた種族に過ぎない。我々を滅ぼそうというなら神であっても闘うしかないと決意する。そして、長い眠りから醒めた001がサイボーグたちに新しい力を授ける…といったところで天使編は中断となる。
このエポックメイキングな作品は、結局石ノ森章太郎生前には完結することなく、膨大な作品メモをもとにかつてアシスタントだった早瀬マサト、シュガー佐藤によって完結編として描かれました。しかし、天使編の純粋な完結篇とはいいがたい感じ。
島本版009は、短編ながら天使編のタッチで描かれていて、天使との本格的な戦闘に入る前の挿話として描きながら、地下帝国ヨミ編の名場面をちりばめつつ、天使編のエンディングをも示唆する内容で、さすが009フリークの島本和彦って感じでした。この調子で、完結篇とは別の島音版天使編を描いてほしいくらい。
その他の作品は、連載を読んでいないとわからない作品もあり、まずは自分の好きな作品の番外編が読めるって感じでの購入はありかと。