1989年制作・アレハンドロ・ホドロフスキー監督/イタリア・メキシコ合作。
昨年、某所にてお借りした「エルトポ」「ホーリーマウンテン」「サンタ・サングレ/聖なる血」のホドロフスキーblu-rayBOX。貸してくれた人にずっと会えず、今週末やっと会えるんで急いで観た。
つーか、借りて1年観てなかったんです。ホドロフスキー監督作品って、エネルギーを吸い取られるので、ほんと元気な時を選ばないで観ると危険。よく考えたら、1年を通して元気な時なんてほとんどなく、”借りてみる”なんてもともと無謀な作品です。
で、さすがに返さないといけないんで、(別の要件もあったけど)今日休みを取って「サンタサングレ/聖なる血」の本編とボーナスディスクを観て、とりあえず全編見ることができました。
「エル・トポ」('69)の??な展開や、「ホーリー・マウンテン」('73)のメタフィクション的なエンディングに比べると、起承転結もはっきりしていてわかりやすい。
それでも、特典映像の"削除されたシーン"が、単に尺の問題でカットするには惜しいシーンで、あった方がよりわかりやすかった。
たとえば、主人公のフェニックスが大人になってナイフ投げをするシーンが本編にはあるのだけど、子供時代は奇術しかやってない。ナイフ投げはサーカスの団長のお父さんの特技だった。だからまあそんなものかな、と思っていたら、削除シーンにありました。しかも浮気性の父の英才教育を受けている子供時代は、敬虔な宗教家の母親との対比という意味ではあった方がよかった。
もうひとつ、自宅の劇場で女プロレスラーにパントマイムを見せるシーンで黒澤明にささげたという侍のシーンがカットされていて、これがないと、女レスラーを殺すときに突然日本刀が出てくる意味が分かりません。
ここら辺追加すると、20分は増えるわけで、最終版が123分ってことを考えると、約2時間半。確かに尺を考えると切らざるを得ない、のかも。
ホドロフスキー監督って、日本の映画監督にすごく影響与えてる気がする。園子温監督なんかもろだと思う。「愛のむき出し」にしても「冷たい熱帯魚」にしても宗教的世界観とエログロな感じ。「愛のむき出し」なんて4時間近くあって、ホドロフスキーとは別の意味で商業主義からは完全に逸脱してます。
特典のインタビューで監督が「脚本は資金を集める為の材料で、資金さえ集めてしまえば後は現場でどんどん変えていって、出資者が考えていた作品ではなく監督が考えたものにできる」といっていたのは印象的。
これ、聞いたことある話だなと思ってたら、富野由悠季監督が「伝説巨神イデオン」を作る時、おもちゃメーカーを"子供たちが合体メカに乗って異星人をやっつける"企画書で釣って、スポンサーが付いたとたんに「あのメカは"第六文明人の遺跡"だ」とか言い出してスタッフが驚いた」という話と一緒じゃん、と思いました。 げに監督という人種の恐ろしさかな。
ホドロフスキー作品、インパクトがとにかくすごい。こんな映画を若い時にみてたら魂持っていかれちゃってました。が、おかげさまで現実に碇を下ろし、既に人生の終わり見えてきた今であれば、単に「すごい映画」というところで踏み留まれます。
若い人は刺激が強すぎ。これこそ成人指定映画。しかも20代もダメです。30歳以上で社会的基盤のしっかりした大人が観るべき映画です。
ただ映画好きなら避けて通ることはできないということを改めて思いました。
おそるべし、ホドロフスキー。
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