坂元裕二・河出書房新社
TBSドラマ「カルテット」のシナリオ本。1巻は6話から10話(最終回)まで。
6話から第2幕。まずは巻夫婦(松たか子・クドカン)の出会いと窮屈になってクドカンが失踪してしまう過去の話。真紀がクドカンの母親(もたいまさこ)への語りとあわせての回想。わだかまりが消え、これまでのサスペンス要素はここで回収される。
そして第2幕は、真紀のさらなる秘密とカルテットの行方が描かれます。
このドラマの魅力は会話の妙なので、シナリオを読むのはすごく楽しい。畳みかけるような会話と、思った以上にト書き(役者の動き)がしっかりと書き込まれていて、アドリブっぽい会話もすべてシナリオ通りというのがよくわかります。
音楽で身を立てるというのはすごく難しい。音大を出ても奏者として活躍できるのはほんの一握り。肉の日のキャンペーンのコスプレをして演奏するという仕事を取ってきた別府君が、真紀さんの代わりに連れてきた代役(松本まりか)に「こんなかっこうで演奏できません。こんな低レベルな仕事とは思いませんでした。恥ずかしいとは思わないんですか?皆さん椅子取りゲームで負けたのに座ってるふりしてるだけですよね。」と全否定。でもそういう人って音楽に限らず世の中にはたくさんいます。
夢をもって生きることは、決して悪いことじゃない。その後別府君こんなことを言います。「夢は必ず叶うわけじゃないし、夢は諦めなければ叶うというわけでもないし、でも夢見て損することはなかったなって、一つもなかったんじゃないかなって思います。」
夢を見たことがない人や早々に諦めてしまった人に比べて、夢と寄り添うようにうまく生きていくってやり方もあって、それを肯定したお話しだったなぁと。
全部が全部明らかになったわけじゃない。中途半端なお話しだったかもしれないけど、それがまた居心地がよかった。
このお話しは、みんながみんな片思いをしていて、エンディングで、「好き」とか「嫌い」とか「欲しい」とか気持ちいいだけの(自己満足な)台詞でしょう。白黒つけるには相応しい(関係を壊す)"滅びの呪文"だけど。」という歌詞があって、本当にその通りだなって思います。
お話しそのものは、なんだか決着がついたようなつかなかったような、"グレー"な感じ。
♪人生は長い、世界は広い、自由を手にした僕らはグレー
恐らく椎名林檎がこの歌詞を作った時は、結末までシナリオできていなかったはずですが、まさにこの詩の通りのお話しでした。
最後に真紀さんが言ってた言葉。売れない演歌歌手だった母親の歌。
「人生には3つの坂があって…上り坂、下り坂。まさか。」

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