「半沢直樹」シリーズ第4弾。証券会社の出向が解かれ、銀行本体に復帰した半沢直樹。今回は、破綻寸前の航空会社(JALがモデル)の話。破たん回避のために、新しい国交大臣の施設再生タスクフォースから、500億の債権放棄を打診される。前門の狼、後門の虎とばかりに相変わらずの難題に半沢直樹危うし、って場面が沢山。外にも敵、内にも敵。このシリーズを読んでいると銀行への信頼感が揺らぐことこの上ない。
ただ、半沢も孤軍奮闘というよりも、半沢の能力を高く買う頭取を始めとした上司、先輩、同僚、後輩、部下がこれまた陰に日向に半沢をサポートする。半沢のヒーロー性が取りざたされがちなこのシリーズですが、実は半沢程目立たなくても半沢の周りの人間は半沢とともに戦う仲間だということがひしひしと伝わってくる。今回も審査部付の富沢、かっこよかった。
「清濁併せ呑む」ということは、言葉にすると簡単だけど、往々にして濁に飲み込まれてしまう。かっこつけて汚れも厭わずなんていうのも、安きに流れているだけ。本当に清濁併せ呑む人は、決して濁には染まらない。
本当は半沢直樹のような生き方をしたいと思っている人は多いけど、半沢並の頭の切れと仲間がいないとあれだけ堂々とは出来ない。だいたいの場合は閑職に追いやられて、不遇なサラリーマン人生を歩むことになる。
私なんかもどちらかというと正義感は強い方で、残り少ない会社人生は、決して日の当たる感じではなかったけど、それでもそこそこは満足しています。それは、悪事に手を染めなかったり、気に染まない事は原則避けてきたおかげ。
出世をするのが男の本懐、なんていう人もいますけど、それだけじゃないと思うんですよね。
- 作者:潤, 池井戸
- 発売日: 2017/09/05
- メディア: 文庫