三浦しをん著・文春文庫
「まほろ駅前多田便利軒」3冊目にして一応完結編。前作(「−番外地」)が依頼客を中心に据えた番外編だったのに対して、多田便利軒を舞台に多田と行天が、巨悪に挑む?正編。
便利軒に行天の別れた妻から1ヶ月半子供を預かって欲しいという依頼が舞い込む。こどもが苦手な多田は、最初その依頼を断るが結局受けることに。行天には自分の弟の子供として説明をするが、子どもが来たとたんにバレる。バツイチ2人の男の奇妙な子育てが始まる。
同時にまほろの街に奇妙な無農薬野菜売りの一団が台頭してくる。目障りな一団にやくざの星が立ち上がる。
もう一つ、これまでバスの間引き運転を疑い続けた岡老人がついに決起。
これまでのお話しがどんどん結末に向かって走りだします。
キッチンまほろの女社長と多田のロマンスも大人の恋愛って感じで好感。
市民病院に入院中の曽根田のばぁちゃんもとりあえず元気だけど、気弱になってきている。
多田と行天とこんな会話をする。
「ねぇ、多田さん。あの世ってあるんだろうかねぇ」
ないというのをためらう多田。そこで行天が
「あの世なんてないよ」
と堂々と言い放つ。そして続けてこういいます。
「でも、俺はあんたのこと、なるべく覚えているようにする。あんたが死んじゃっても。俺が死ぬまで。それじゃダメ?」
曽根田のばぁちゃんは
「それはいいね」と。
人は死んで灰になってお墓に入る。自宅にはお位牌を仏壇に祀る。でも、どんなに立派なお墓にも仏壇にもやっぱり亡くなった人はいないと思う。
亡くなった人の事を憶えていることでその人は死なない。みんな忘れてしまってはじめてその人が亡くなったことになるというのは正しいことだと思う。
まわりの人の記憶に残る人生。別に記憶に残そうと躍起になる必要はなく、日々の付き合いの中でその人の血となり肉となり、知らず知らずのうちにその人を構成する一部になる。それはやっぱり幸せなことだと思います。
社会からドロップアウトした多田と行天は、まほろの人々によって癒され人間性を取り戻していく。
完結編ではあるけど、多田便利軒の日常はまだまだ続くようなので、また2人とまほろの人たちに逢いたい、そう思わせる物語でした。
まほろ駅前シリーズ、お勧めです。
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