平井和正著・日下三蔵編 ハヤカワ文庫JA
日本SF誕生60周年記念として企画された、日本SF黎明期を支えた作家を集めた選集第4巻は平井和正でした。これまで出たのは筒井康隆(第1巻)、小松左京(第2巻)、眉村卓(第3巻)。
新刊が続々出る出版界ですが、旧作は最近書店の書棚を飾ることはめっきり減りました。この傑作選に収録されている作家さんの作品も新刊書店ではほとんど手に入りません。日本SFから読書好きになった私としては、哀しい限りです。
今回の平井和正編に収められたのは次の12作品。短編ばかりでなく、第2部は連作短編のサイボーグブルースを全て収容しているという力業。平井和正原作/桑田次郎画の「デスハンター」)(1969)のエピローグ部分を付録として所収。これは、のちに「死霊狩り」として小説発表された時に省かれた部分。小説版しか読んでいない人には、ゾンビー島爆破後の物語が読めます。
第一部
レオノーラ (「宇宙塵」〔同人誌〕 1962.2(53号)
死を蒔く女 (「宇宙塵」〔同人誌〕 1962.6(56号)
虎は目覚める (短編集「虎は目覚める」早川書房 1967.2.15 (ハヤカワ・SF・シリーズ 3135)
背後の虎 (同上)
次元モンタージュ (同上)
虎は暗闇より (同上)
エスパーお蘭 (短編集「エスパーお蘭」早川書房 1971.4.15(ハヤカワ・SF・シリーズ 3267)
悪徳学園 (同上)
星新一の内的宇宙 (同上)
転生 (同上)
第二部
サイボーグ・ブルース (「サイボーグ・ブルース」 早川書房 1971.12.15(日本SFノヴェルズ)
デスハンター エピローグ(コミック「デスハンター」のエピローグ部分の原作1970.8)
「サイボーグブルース」「デスハンター・エピローグ」は先日kindleで再読したばかりだったので、楽しみは第1部の短編でした。特に好きなのは「レオノーラ」。その他の作品も3−40年前に角川文庫でむさぼり読んだ作品ばかりですが、さすがに結構忘れてました。
御覧の通り、一番古いものは62年、今から56年も前に書かれたものですが、全く古びていません。 人間の内面にどんどん切り込んでゆく平井和正の作品は、これまでイメージしていたSF作品という概念を超越しており、すごく引き付けられます。人間の邪悪な面をこれでもかと書き続けた初期の平井和正は毒が強すぎて、小中高と読み続けた私の人格形成に悪影響だったかもしれません。もっともその後、ウルフガイシリーズ、幻魔大戦シリーズで「人間も捨てたもんじゃない」と思わせてくれましたが。
「星新一が先駆者として道を拓き、小松左京が万能ブルドーザーで地をならし、口笛を吹きながら筒井康隆がスポーツカーを飛ばしている」と言われた日本SF黎明期の作家、星新一、小松左京、筒井康隆、半村良、光瀬龍、平井和正、豊田有恒、眉村卓の作品は今でも十分面白いです。半村良とかも好きだなぁ。
ただ残念ながら今、書店の書棚に殆ど並んでいません。本を読む楽しみを憶えさせてくれたこれら作品がいつでも手に取って読めるといいのですが。
とはいえ、平井和正の作品がいまだに読めるというのはうれしい限り。
今度ハヤカワで死霊狩り1-3巻合本版が出るとか。年始の生頼範義展といい、ウルフガイ復刊といい、今年は平井和正復刊イヤーになるか。電子書籍でしか出ていない作品もたくさんあるので、是非早川書房さんには頑張って欲しいです。

日本SF傑作選4 平井和正 虎は目覚める/サイボーグ・ブルース (ハヤカワ文庫JA)
- 作者: 平井和正,日下三蔵
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2018/02/06
- メディア: 文庫
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