碧野 圭著・実業之日本社文庫
前作「情事の終わり」(単行本時のタイトル「雪白の月」の方が好きです)。作者はTVドラマにもなった「書店ガール」の碧野圭。
前作で年下の同僚、関口諒とW不倫の末、家庭も仕事も捨てた奈津子。その1年後から物語は始まります。嫌いになって別れたわけではない2人が再会するのは必然。
不倫はよくない、と一般的な事を云うつもりはありません。確かに既に改善の兆しもない冷え切った夫婦関係で、外にそういった対象を求めるのはわかるし、不倫しなくとも結婚生活を解消するという選択をするをするのも理解できます。周りに結構いますしね。
一度は結婚をするまでの好感情を持った相手とそこまで関係が悪化するのはよほどのこと。毎日の積み重ねで"堪忍袋の緒が切れた"ってことなんでしょう。ストレスから病気になるなんていうのもよくある事なので、であれば安寧な生活を送る為にも離婚をするのはよい事です。しかしながら、一方でどれくらい話し合ったんだろうかと思ってしまいます。
結婚って他人同士が共同生活をして次代につなぐ営みだと思うのです。それまでまったく異なる環境で暮らしてきた男女ですから様々な点で違いがあるのは当然。結婚ってそれをすり合わせていきお互いに妥協点をみつけていく作業だと思います。
問題は、お互いに意地を張りあって自己主張ばかりする、相手がどうしてそういう主張をしているのかを斟酌しないことが離婚を考える一番の要因だと思います。「わかってくれる」相手を外に求める事がやがて"不倫"となる。一般的にそういう不満からの不倫というのは泥沼になりがち。
ほんとに出逢うべき人と出逢えた、というのは一つの結論だと思いますが、破局に至る前にどこまでお互いのことを思いあったかが大切。その結果の破局であれば嫌な別れ方にはならない。周囲の意見はこの際2次的3次的なものです。
なんか不倫肯定するような物語で、周囲はともかくなんとなくハッピーエンドになっているところが、どうしても違うんじゃないかなと思ってしまいます。
いずれにせよ更に一歩前に進んでしまった二人。今度は幸せになって欲しいし、さらに言えば、巻き込まれた周りの人も幸せになって欲しいと思いました。

- 作者: 碧野圭
- 出版社/メーカー: 実業之日本社
- 発売日: 2013/10/04
- メディア: 文庫
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