小松左京著・新潮文庫
今更小松左京の新刊が読めるとは。。
前半の「やぶれかぶれ青春記」はかつて旺文社文庫で出ていたもの。後半の「大阪万博奮闘記」は70年の日本万国博覧会に深くかかわった件について「ニッポン・70年代前夜」(66年)と「万国博はもう始まっている」(71)という万博前と後のエッセイをまとめたもの。
小松左京は好きな作家さんのひとり。10代の頃から角川文庫で出ているものは殆ど読み、その後新潮、徳間、ハルキなど文庫で出ているものはダブりも含めかなり読みました。日本中で大ブームとなった「日本沈没」、エスパー+スパイで「エスパイ」、鉄を喰うアパッチを描く「日本アパッチ族」、細菌がばらまかれた世界「復活の日」、突然人がいなくなったらという怖いシチュエーション「こちらニッポン…」数え上げればきりがありません。
どれもエンターテイメントでありながら文明や社会の矛盾に鋭く切り込み、読後深い思索に誘ってくれるストーリーテラーでした。私のシニカルでありながら日本や社会に対して捨てきれない愛情を感じるのは、小松作品を読んでいたおかげかと思います。
そんな小松左京氏の中学生から旧制高校、そして新制大学時代初期について振り返ったのが前半「やぶれかぶれ青春記」戦中から戦後の激動の時代、事あるごとに拳を振っていた教師が戦後手のひらを返して「実は私は民主主義者で…」といった話で大人が信じられなくなったというのは、時代のせいだけではない大人のいやらしさが胸に迫ります。
万国博覧会当時5歳。行きたいなぁと思いつつ関東に住んでいて行けなかった。カミさんは行って「月の石」見たらしい…。
子供の頃は単純に面白そうなイベントだと思っていたけど、小松左京を始めたくさんの大人たちが万国博覧会に崇高な意義目的を作りたくさんの障害を乗り越えて作り上げたものでした。だから日本国民全員が熱狂し、いまだに忘れられないものになったんでしょうね。
小松左京の自伝というよりも、戦中から戦後、そしてあの万国博覧会の裏側を記録した昭和史の一面。
かなり面白く読めました。

- 作者: 小松左京
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2018/09/28
- メディア: 文庫
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