三上 延著・光文社文庫
2015年初刊・2018年文庫化
「ビブリア古書堂の事件手帖」の三上延によるスピンオフ的物語。といっても「ビブリア―」との関連性はほぼない(2巻2話に出てきた五浦くんの元カノが登場)。主のいなくなった江ノ島にある写真館の片付けを頼まれた孫娘の繭。自分が写真が友人の運命を狂わせた事で悩む日々を、遺品整理とともに新しい一歩を踏み出す。亡くなった祖母は出て来ないのに祖母に操られるようにして謎が解決される毎に、繭が人の温かさに触れていくのは、祖母の仕掛けたものなのかも。「ビブリア―」同様殺人事件の起きないミステリは私的には心地よい。
構成もしっかりしていて、最後の頁に収斂さえていく。このまま終わってもよいけど、もう少し成長した繭の姿と瑠衣との新しい関係も見てみたい気もあります。
生きていると、わざとじゃなくても人を傷付けてしまう事は誰にでもある。もちろんそれは反省すべき事ではあるし、傷付けられた側としては、それでのほほんと過ごされたら恨んでも恨み切れない。だからこそ傷をつけたことを自覚して自分と向き合うことが大切。許しを請うて言葉では許してもらえるかもしれないけど、自分の犯した罪を忘れることなく二度と同じ過ちを繰り返さないことが重要だと思います。
最近は、傷付けられるのが怖い、傷付けるが怖いといって、SNSで表面的なお付き合いをして、深い付き合いをする人が少なくなった。でもそれでは心から信頼できる友達関係は築けない。喧嘩をする必要なないけど、意見を戦わせることはお互いを理解する上では必要不可欠じゃないかと思います。私くらいの年齢になるともう先もないのでそういう関係は面倒ですが、若い人まで上っ面の付き合いで終わらせてしまうのは勿体ないです。だからと言ってむやみに喧嘩を吹っかけるのは愚の骨頂です。
「人は人との関係の中でしか成長はできない」私の座右の銘です。自分を磨くという打算的な考えかもしれませんが、恐れずに人の輪に入っていく事はやはり大切だと思うのです。
- 作者: 三上延
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2018/06/12
- メディア: 文庫
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