月村 了衛著・ ハヤカワJA文庫
新型機甲兵装「龍機兵」を擁する「特捜部」を強引に発足させた警視庁。龍機兵の搭乗員として傭兵と契約するなど特捜部創設に際しての強引な手法は、既存の警察組織から反感を買う。そんな中、英国要人の来日とそれに伴うテロが発覚、しかもテロを仕掛けるのは龍機兵の操縦者でもあるライザの古巣、アイルランド共和軍暫定派の流れをくむテロ集団「アイリッシュ・リパブリカン・フォース(IRF)」の指導者のひとり、通称「詩人」と呼ばれるキリアン・クイン。
下巻では、ライザの更に深い過去が描かれるとともに、来日した要人警護とそれを巡るテロリストと特捜部との闘いが描かれる。
龍機兵はパワードスーツのようなもので、この存在がSFというジャンルと捉えられる要因ですが、これが別の現実の兵器であっても物語に破綻は起きない。龍機兵=マクガフィンガジェットといってもよいと思う。
ロボットものというには地味過ぎる。警察もの、社会派ものというには、龍機兵が邪魔をする。評価が難しい。2012年日本SF大賞を受賞していますが、SFという色付けをされることで、読者が狭まってしまうのはこの作品にとって良い事とは思えない。
暴力は何も生まないということを強く訴えつつ、とはいえ暴力に対して最も有効な手段は暴力(武力)であるという点はなんとも皮肉ではある。
暴力は連鎖し、哀しみも連鎖していく。人間はどこかでこの鎖を断ち切ることができるんだろうか。

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